Slot Canyon#1
アメリカ西部、アリゾナ州とユタ州の州境を囲む一帯にはここに写っているようなslot
canyonと呼ばれる地形が無数に存在する。岩肌の大地で、地面に吸収されず行き場を失った雨水が集まって鉄砲水となり、このような美しい曲線を描いた渓谷を削りだしていくのだ。狭く、深いその渓谷は日中のほとんどの時間、壁面の上層部にわずかに光が当る程度である。しかし、その光はこだまするかのように両壁を照らし、その結果谷底に向かって豊かなグラデーションが生まれる。色彩・造形・光の三つが見事に揃った場所であり、世界を探してもあまり類を見ない景観だと思う。この写真の撮影にあたってフィルター等は一切使用していない。フォトショップでの画像処理も簡単なレベル補正とトーンカーブ補正に留めている。ここに写っているものは私が実際に見たものとほぼ同じ姿だ。ただ、一つだけ『加工』がしてある。見る向きを変えてあるのだ。本当は写真右側の黄色い部分が壁面上部で、左側が谷底という位置関係になる。しかし、元々抽象的な模様であったせいもあり、色々試した結果この位置で見た時が一番安定感を与えるように思えたので、この状態でお見せすることにしている。
写真データ：Bronica SQ-A 80mm Velvia 50 ドラムスキャン
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