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USM(アンシャープマスク)はCMYKにかけるのが原則 瀬飛寅男(せっぴとらお) |
先日あるところで…といっても電塾だが「USMをRGBでかけると色が変わる」という話があった。マスターが口をすっぱくして言っている墨版と同根の話だが、このようにCMYKに関した問題は墨版に関係したことがほとんどだ。GCRやSWOPのことを思い出してほしい。日本の墨インキは欧米に比べて濃度が濃いので、下色をほとんど透過しない。したがって欧米では問題にならない彩度低下が起こって、墨版を多用したものでは「墨っぽい」という評価につながってしまうという、なんとも情けないことになってしまう。これは網点が重なる場合に起こることで、それでは「網点を重ならせない印刷」となるとFM網点が良いことになるが、日本で言われているFM網点はFMとAMの中間的なものだから「これだ」とは言い切りにくい。 いずれにしろ墨版が30%を超えなければ重なる確率は少なく、GCRが悪い方に働くケースは極めてまれなので自信を持って使ってほしい。暖色系などは特に相性が良いが、しかし、30%を越えたあたりから急に悪さをし始める。チョコレートの色がまさしくこれに当たるわけで、色の薄いミルクチョコレートが限界で、それを超えてビターっぽくなっていくと彩度が急激に落ち始めてしまう。 さて、図を見てほしい。RGBにUSMをかけるとRGBにエッジが付き、そのままCMYK変換するとRGBのエッジはそのまま墨版のエッジとして変換される。つまり墨版にしっかりエッジが付いてしまうのだ。これはパッチだが西陣織の生地だったら折り目にエッジが付くということは折り目がハッキリはするが、同時に墨による彩度低下も招いてしまうことになる。一方、CMYKに変換してからUSMをかけるとYには黄色いエッジ、M版には赤いエッジが付くが、C版とBk版は量が少ないのでほとんどUSMはかからず色が変わることはない。 RGBにUSMをかけても、CMYKに変換せずRGBのまま運用すれば特に問題ない。その後にCMYKに変換することが問題なのだが、要は印刷の不安定さが元凶ということ。話は変わるが、西陣織などにUSMをかける場合、幅広のエッジにしてやるとDM効果(ディファレンシャルマスク効果)というものがかかり、折り目のコントラストがはっきりするが、これはまたの機会に詳説しよう。要するに1mm幅の白黒パターンがあった場合に、半径1mmのUSMをかければ左右に1mmのエッジが付くので、そのエッジが濃度自体をアップしてより黒く、白の濃度はダウンしてより白くなり、コントラストがハッキリしてくるのである。 |
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[図01] 処理前のRGB画像。 |
[図02] [図03:Bk版] オリジナルのRGB画像に対してUSMをかけ、それをCMYKに変換したもの。右の画像はBk版(墨版)だが、フチが現れていることがわかる。 |
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[図04] 処理前のCMYK画像。 |
[図05] [図06:Bk版] こちらはCMYKに変換してからUSM処理をしたもの。 Bk版を見ても、RGBでUSM処理したときのようなフチは現れていない。 |
ということで、やっぱりUSMはRGBではなくCMYKにかけた方が無難という例になってしまったが、これから移行する新RIPであるPDFプリントエンジン、つまり、アドビシステムズ社が提唱するPDFを直にRIPするシステムに移行して、RGBをダイレクトに貼りこむ「PDF/X4」が一般化したときはどうなるのだろうか? ちなみに大日本スクリーンのTrueflowの場合、Color Genius DCから吐き出されたものには「レシピ」と呼ばれるマクロコマンドのようなものを使用する。それにしたがってCMYK変換後に適正なUSMがかかるようになっているのだ。製版に慣れた、製版チックな目を持っている人には、こちらの方が自然なUSMに感じるだろう。しかし若い人に先ほどの色が変わってしまったものを見せて比較させると、「なるほどRGBの方がシャープに見えますね。やっぱりRGBフローなんですね」くらい言いそうだ。そりゃ黒線が出ているんだからシャープさではこっちの方が上だろう。ではどうするか? オイラのお奨めはUSMの幅を狭めること、つまり半径を普段1pixelなら0.7〜0.5pixelというように、2/3から1/2に幅を狭くしてやる。これなら「こちらがシャープに見えますね」といっても微笑んでいられる。2pixelの黒線がそこいらじゅうについていたら引きつるだけじゃなくてオイラだったら暴れだしてしまう。そんなこんなでCMYKはやっぱり墨版に尽きるのだ。 |
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瀬飛寅男 (せっぴとらお) |
2007.09.11 |