【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
人物撮影:女性モデルを用いた人物撮影1(入門)
稲垣 英徳

モデルを選ぶプロセス

写真2 【写真1】
予算が在るプロジェクトでは、ある程度の時間をかけて、きっちりとオーディションやインタビューを行いましょう。モデルを見る為にも、なるべく極端なメイクなどをしない素の状態、ナチュラルメイクの時に会って判断する事が理想です。

カメラマンがモデルを採用する方法は、一般的には、以下の様に大別されます。

1. モデル・タレント事務所に所属する方を、要望を伝えて派遣して貰う。
  契約は、エージェンシーとカメラマン、またはクライエントが行う。


2. 自分で各所に求人を出して、オーディション / インタビューの後、直接モデルと契約します。
  この場合、口頭契約でも契約ですが、書類契約が望ましいでしょう。



1の場合、代理店経由のプロジェクトなら、代理店が指定するモデルを使う事が多くなります。つまりカメラマンの意図よりも、代理店の責任者の感性・チョイスの問題となり、撮影時のCreative Directionもカメラマンの判断よりは元請けである代理店からの『○○風によろしくお願い致します』という指示の元に撮る事が多くなります。

ただ、予算があるプロジェクトで、カメラマンが殆どのCreative Directionを行う権利を与えられている場合は、色々なエージェンシーから送られて来たモデルのヘッドショットや、さらに詳しいデータを見ながら、インタビューなどを経て決めることになります。ここでは質の高いモデルを安定供給して貰えるエージェンシーとの関係性が重要となるのですが、これについてはまたの機会に詳しく述べたいと思います。

日本国内に於いては、イベントコンパニオンに類する女性モデルのジャンルが欧米に比べて非常に発達している事から、低予算の撮影では、比較的安定供給があるこれらモデルを相手にする事も多くなるでしょう。一般論を述べれば、これらのモデル達は、身長やスタイルなどの問題から、あまり版の大きな撮影には向いていないことが多いですが、ビデオ、テレビカメラ、コンパクト機などとの親和性が高いモデルも多いので、テレビ、ネット動画と連動する撮影に於いては、十分考慮しうると言えるでしょう。素人相手の撮影会慣れしている方も多く、低予算の撮影でも比較的上手く対処してくれます。

最大の問題点としては、やはり身長が低いことから、長身のショーモデルタイプの子の撮り方とは必要な撮影テクニックが大きく変わり、それなりの撮り方の工夫が必要になる事です。簡単な比較を述べれば、NYCに所在する欧米の主要エージェンシーの多くでは5' 8"(172cm) 程度の身長を必要とし(多くのファッションショーや全身スチル撮影では180cm程度が平均身長となります)、160-165cm程度の身長があればファッションスチル撮影のモデルになれ、168cmもあればショーにも出られる日本国内の基準とは随分と違っています。つまり、日本国内で、特に全身撮影を綺麗にインパクトをもって行う必要がある撮影では、長身モデルの絶対数不足から、そのコストは比較的高くなる事を覚悟する必要があるのです。

写真3 【写真2】
Photoshopで処理する事が前提の場合、所謂多少美化されたバージョンを作る事を前提に撮る事となります。

2の自らモデルを見つけて採用する場合、オーディションやインタビューの手間は勿論ですが、カメラマンはきっちり書類等を整理し、管理する義務を負う事になります。肖像権に関する契約・同意書、海外市場でも使用する場合の諸権利の扱い、その他の転用に関する契約書類、そして欧米などでは間違いなく必要になる年齢等の証明の記録など、その用途によって多くの書類業務が発生します。ただ、基本的にモデル相手の契約は、一定の書式があれば良いので、カメラマンの方が活躍される国・自治体で法的に有効になる書式を、一度法律の専門家に作成して貰うのが最善です。

現在はネットの発達などから、地方向けに作成されたものでも、国際的な知名度を得るのが比較的簡単になった事から、肖像権の問題は非常に複雑化していますので、この点を注意する事を怠らないように。特に海外ロケなどで、海外のモデルとのやり取りがある場合は、その辺に関しては非常に厳しく対応する必要があるでしょう。

書類等をキッチリ出来ない場合は余計なトラブルの元になりますし、将来的なコストが嵩むのこともあるので、自らモデルを見つけて採用するのは、エージェンシーで望んだモデルが見つからなかった場合の手段としてのみ使う事が望ましいでしょう。もちろん、雑誌系の仕事などで出版社側がきっちり書類・ギャラなどを用意している場合は、この様な心配はありません。また、代理店やある程度の規模のデザイン事務所に所属されて活動されている場合も、書式がある所が大半ですから、それらの準備さえ怠らなければ、問題は発生しにくいと思います。

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  稲垣 英徳   2007.11.13

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