Column


小島勉さんインタビュー  
色を見る目を養うためにカラーチャートを活用
小島さんが行っているのは、最近では画像合成というよりも、写真をきれいにするという意味での修整=レタッチの仕事が多い。特に写真家やクライアントの要求する色味を出すのは難しい。そのような色を見る目というのは特別なものなのだろうか。
「レタッチしても自然な見え方がされるよう、割と普段の生活で見る風景の光や色を気にしていますね。夏や冬の青空などの季節感や、夕日の色の違い、暗闇の中のトーンを意識したり。そういう何気ない景色の中に、絵づくりのヒントがあると思います。」
「それからカラーチャートはよく見ていましたね。 いまでも見はじめるとしばらく見入ってしまいます。結構チャート好きなんです。 これは色を見る、色を作る訓練になりました。たとえば、自分が欲しい肌色はどれくらいかチャート上で確認します。欲しい肌色の%とデータ上の色%の差分を読み取って、どの色を増やしたり減らしたりするべきか、どのようにコントロールするか判断できるわけです。さすがに今は色の仕組みを理解しているので、チャートがなくても判断できますが。」
色調整というと、モニタやプリントだけで色を確認したり、あるいはよくても現物を見て色を調整することが多いが、実際うまく行かないことも多い。特に印刷物で使われる画像データを扱う人は、チャートで色を確認するというクセを付けておいたほうがよいだろう。

修業時代(!)には、必須とも言えるカラーチャート。CMYKの各%を段階的に変化させている。
このチャートを見て色を確認し、欲しい色に必要な色成分、不要な色成分を判断する。
グレーはすべての色の基準

「先輩にはまずグレーを基準に考えなさいと教わりました。特にCMYKでは全版が同じ%でもきれいなグレーになりません。C>M>Yという比率でグレーを追求します。CMYKでは、シアンを下げれば茶色に、マゼンタを下げればグリーンに、黄色を下げれば紫っぽくなります。そういった個々の色の動きで得られる関係を知るために、まずグレーを覚えることが先決だというわけです。色調整をする上では、このような色の理解は非常に重要です。」
小島さんが言うのはいわゆる補色の関係だが、さまざまなものが写り込んだ一般的な写真では、その効果を実感しにくい。ところが、余分な色を排除したグレーを用いると、その仕組みがよくわかる。Photoshopでなら簡単に補色の関係を知ることができるので試してみるといい。試すだけならCMYK全版が同じ%のグレーを作り、トーンカーブでチャンネルごとにカーブを上げ下げすれば、補色の関係を知ることができる。
「今の仕事ではRGBの調整がメインです。RGBはそれぞれの値が同じであればきれいなグレーが表現できます。そしてプリンタもそれをきっちり表現できる機種が多いです。モノクロ写真がとても作りやすくなりましたね。 でも、モノクロ作品って色で見せることができないので「絵づくり」ということでは一番難しくてシビアなんですよ。 モノクロ作品をちゃんと作れるようになれば一人前かな・・・。」

画像処理の下準備にIntuos3
さて、実際にレタッチを行いながら、小島さんのIntuos3の使いこなしを見させていただいた。
「やはりペンタブレットの良さは筆圧ですよね。あとはペン先とタブレットの摩擦等を含めた描き味。ポジや原画をスキャンした場合に入り込むゴミ、あるいは最近だとデジタルカメラの撮像素子に付着して写り込んだゴミなど、ゴミ取り作業は必須ですが、必要以上に修正を加えないよう作業するには筆圧に対応したペンタブレットがベストだと感じています。」
ゴミ取りは、画作りを行うための言わば下準備になるわけだが、それに時間を費やすよりも肝心の画作りに集中した方がいい。その意味でも「自分の感触や志向に合っていて、もっとも使いやすいのがIntuos3」だという。


インタビュー中に参考までにレタッチしてもらった画像。顔にかかる髪を消してもらった。
このような場合、サイズの大きなコピースタンプツールを使うと、不自然な結果になりやすい。数ピクセルの小さなサイズに設定した「硬い」コピースタンプツールを利用するのがコツ。肌のテクスチャが保持される。


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