Column
Photoshop world Reportage
  アーティストが作品を作るとはどういう事なのか。思考し、作り上げ、表現する。その姿を追ったドキュメント「Photoshop wrold Reportage」。今回のアーティストは異色の2人組アートユニット Zoren Gold & Minori。彼らの最新撮影現場にPhotoshop wroldは2日間にわたり同行した。  
  Zoren Gold & Minori + getty images[funky punky tokyo future]  
vol.1 Green -[PASONA O2]
     

緑の葉に、さんさんとふりそそぐ光り。小川のせせらぎの中にはメダカが泳ぎ、植えられたばかりの稲の苗はかすかなそよ風を受けて小さくなびいている。

東京、大手町。ビルの地下2階に広がるそれらの風景はすべて人工のもの。ここでは植物育成照明を使って花やハーブ、果物や野菜、稲まで育てている。今回のZoren Gold&Minoriとgetty imagesのコラボレーション企画[funky punky tokyo future]で、チョイスされたシチュエーションのひとつがここ、 「パソナO2」と呼ばれる植物育成施設。外からの光りが一切ない地下の空間で、ありとあらゆる人工の光が植物を照らし、植物は自然の脅威にさらされることなく青々と葉をしげらせ、みずみずしく赤い実を膨らませている。ゾレンとミノリはその人工の楽園にモデルとして、「家族」を立たせた。全身を覆う白い作業服とマスクにゴーグルといういでたちは、まるで研究や実験を行うかのよう。その存在感だけで、この空間がまるで違う意味を持つ場所のように見えてくる。

撮影は迅速、かつ的確に進んでいく。モデルの場所を決め、ポージングをディレクションするのはミノリ。流暢な英語でパートナーであるゾレンと意見を交わしつつ、ゾレンの意図を瞬時に察し、モデルやスタッフに指示を出す。ミノリもその場で自らのアイデアを積極的に出していく。二人の抜群のコンビネーションで次々とショットがカメラに押さえられていった。だが、現場では様々な事が起こる。突然、大きな泣き声が響き渡った。子役モデルの男の子が初めての撮影の現場を怖がって泣き始めてしまったのだ。今回、モデルはほとんどプロを使わないで撮影しているので、こういうハプニングも当然起こる。そのハプニングにも余裕の笑い顔で対応するゾレンとミノリ。男の子が入る予定の撮影を後回しにして現場の流れを止めずに、二人は次々に違うショットをその場で作り上げていった。

撮影は後半にいくにつれ、どんどんと近未来を彷彿とさせる場面へと移っていく。蛍光ランプの光は通常よりもはるかに強く、より区画化、整備されている栽培棚には順序良く育っているサラダ菜の列。そして壁一面に銀のアルミホイルを施された部屋の中には、通常よりも大きく、まるで葡萄の房のようにたわわに実をつけたトマトの苗があった。ご機嫌がなおった子役の男の子と母親の女性は全身をまわりと同じくシルバーのタイツに身をつつみ、その作物の恵を手に取る。そこにイメージされる人間像と神聖な儀式の形容をゾレンはカメラに押さえていく。

やがてお昼休みの時間になり、会社のビル内であるこの植物育成施設は憩いの時間をとる会社員の姿でいっぱいになった。地下で緑に囲まれながらの昼休み、という一風変わった都会ならではの情景の中、ここでの撮影は無事終了した。

元気一杯に走りながら立ち去る子役モデルの男の子と母親の女性を見送り、ゾレン&ミノリと撮影スタッフは次の撮影場所であるお台場臨海公園へと車で向かう。だが、ビーチでの撮影前だというのに空はどんよりと重く曇り、嫌な気配だった。

to be continued.


 
 



 
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撮影協力: 植物育成施設「パソナO2」東京都千代田区大手町2-1-1大手町野村ビル地下2階 
http://www.pasona.co.jp/pasona_o2/ 
 
Zoren Gold & Minori  
ドイツ出身のゾレンと日本人のミノリによるアートユニット。
写真をベースにしながら、イラストレーション、コラージュ、グラフィックデザインを組み合わせた独自のビジュアルで、各界から注目を集めている。彼らを素晴らしい成功へと導いた 挑発的で奇想天外な作品の見事なコレクションが収録されている「Object that Dreams」を発売中。

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