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Photoshop world Reportage:Zoren Gold & Minori
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アーティストが作品を作るとはどういう事なのか。思考し、作り上げ、表現する。その姿を追ったドキュメント「Photoshop wrold Reportage」。今回のアーティストは異色の2人組アートユニット Zoren Gold & Minori。彼らの最新撮影現場にPhotoshop wroldは2日間にわたり同行した。
Zoren Gold & Minori + getty images[funky punky tokyo future]
vol.3 Daily
-[Train&Bath]
およそ電車の中ほど、『東京の人』をとらえるにふさわしい場所はないだろう。皆それぞれがどこかへ行く為にこの通勤手段を利用する。同じ場所に赤の他人と乗り合わせ、狭い空間と目的地までの時間を共有する。それはどこでも同じことだが、東京の電車はことのほか多様な表情をその中に内包しているように思える。
ゾレンとミノリの撮影二日目のシチュエーションは、前日の非現実的な場所からうってかわって、平凡な日常の中での場所へと移行していた。とはいえ、日常的な場所ではかえって撮影困難な場合が多い。長津田駅と青葉台駅間を往復する東急田園都市線車内での撮影には、東急電鉄の職員が同行し、モデルのポージングでのマナー違反になるものに関しては厳しくチェックされる。足を組む、携帯をかけたり、メールをチェックするなどのポーズはすべてNGとなる。しかも動く車内での足場は安定せず、光は様々に変化する。さらに駅に停車すれば人の出入りもある。逆にその中での不確定に起こる要素もゾレンは積極的にカメラにおさめていく。
モデルはギャル二人とサラリーマン。前日の撮影と同じキャラクター設定を用いているのは、やはりそのコントラストの面白さを狙ってのこと。電車の中では当たり前に遭遇するであろう二つのキャラクターは、異質な性質でありながらも同じ空間を共有することを日常としている。限られた車内の中では同じ集団に属しているという一時的な現象をゾレンとミノリは様々なアングルから切り取っていく。
青葉台駅に電車が滑り込むと、職員が「はい、撮影終了!」と声高々に叫んだ。
一時的な現象を共有した現場スタッフの全員がやはり日常と同じように、その空間から解き放たれ、駅へと降り立つ。そして電車はまた別の集団をその空間を閉じ込め、走り去って行った。
次に向かったのは石神井にある銭湯「たつの湯」。銭湯は今ではすでに日常的な場所ではなく、ノスタルジィを具現化したテーマパークのような存在だ。特にこの「たつの湯」は昔ながらの日本の銭湯そのままのスタイルを維持している。それでも日常から浮き上がってはおらず、逆に町並みの中にとけ込んでいるのは、この銭湯が歴史を含み、生活を育んできた存在だからだろう。
ゾレンとミノリはこの「たつの湯」と、そばに設置されていたコインランドリーを撮影しはじめた。コインランドリーでは近所の主婦が洗濯物を乾燥中。まさにリアルなハプニングも、コインランドリー本来の姿として、シチュエーションの中に取り入れていくことを思いつくミノリ。主婦に交渉する役目は「たつの湯」のご主人。陽気なご主人は主婦を説得しはじめる。状況がうまく飲み込めず、困惑気味な主婦に「いいんだよ、どっしり構えてれば。お姉さん(主婦のこと)たちがこの日本を作ってきたんだからね」と、言いながらてきぱきとその場を仕切っていく。地元に根付たコミュニケーションのやり方に、スタッフからは「うまいなぁ、見習おう」などという声も聞こえる。コインランドリーでは乾燥機の中にモデルを潜り込ませたり、遊び心を全開にして楽しみながら撮影を行うゾレンとミノリ。
東京の日常の今と昔をうまく融合させたカットを撮り終え、次の現場へと向かうゾレンとミノリ。いよいよこの撮影も大詰めへと近づいていく。
to be continued.
撮影協力: たつの湯
東京都練馬区石神井6-19-26
TEL: 03-3922-0753
ドイツ出身のゾレンと日本人のミノリによるアートユニット。
写真をベースにしながら、イラストレーション、コラージュ、グラフィックデザインを組み合わせた独自のビジュアルで、各界から注目を集めている。彼らを素晴らしい成功へと導いた 挑発的で奇想天外な作品の見事なコレクションが収録されている「Object that Dreams」を発売中。
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