Column
Photoshop world Reportage
  アーティストが作品を作るとはどういう事なのか。思考し、作り上げ、表現する。その姿を追ったドキュメント「Photoshop wrold Reportage」。今回のアーティストは写真家・中野正貴。50代にして初めてPhotoshopに挑戦する姿を追う。  
  中野正貴  
vol.3 「50代からはじめるPhotoshop講座」 - [合成編 2]
           
テーマ
今回はやや高度な画像加工をするために、レイヤーマスクの使い方、ブラシツールの使い方にチャレンジ。

1.まずは前回のおさらいから
@Photoshopの立ち上げ
 
Photoshopの立ち上げ ドッグの中のPhotoshopのアイコンをクリック。
A画像を開く  
画像を開く 「ファイル」の「開く」を選んで、表示される目的のファイルを選択。commandキーを押しながらクリックして選択すれば、任意の複数のファイルを同時に開くことができる。また、ファイルをPhotoshopのアイコンにドラッグするか、ダブルクリックでも開くことができる。
B画像を重ねる  
画像を重ねる 上に重ねる画像を「command+A」で全選択し、「編集」メニューの「コピー」を選択、もしくは「command+C」。次にもう一方の画像を選択し、今度は「編集」メニューの「ペースト」を選択、もしくは「command+V」。
C「不透明度」調整する  
「不透明度」調整する レイヤーパレットの「不透明度」で、二枚の画像の重なり方を調整。またレイヤーパレットの「描画モード」を変えることで、画像の重なり具合をさまざまに変化させることができる。

最初の講義から約1週間後、2回目の講義が行われた。前回までのおさらいと、できる範囲でのPhotoshopを使った作品制作が宿題になっていた中野氏だが、その進み具合をたずねてみると、「いやあ、全然さわってないよ(笑)」のひとこと。「撮ってるビデオ(動画配信のため、講義中はビデオを回しっぱなしにしている)、もらえるのかな?できれば編集してない、ノーカット版が欲しいんだけど。それ見れば全部思い出せるからさ。というか、それがないと絶対思い出せない!」というわけで、まずは前回の復習からのスタートでした。

2.レイヤーマスクを使ってみる
.レイヤーマスクを使ってみる
今回は一歩踏み込んで、レイヤーマスクを使って2枚の画像の重なり具合を調整してみる。まず、レイヤーの上に配置されている画像に、レイヤーパレットからレイヤーマスクを追加する。描画色を黒にして、マスクにブラシツールでペイントすると、その部分だけ透明になり下に配置されている画像が見えるようになる。これは、実際の操作も、また言葉での説明も難しい。初心者ながらも合成をテーマにした以上、レイヤーマスクは避けては通れない。頭で覚えるよりも、まずは体で覚えましょう。
この時注意したいのは、必ずレイヤーマスクにペイントすること。うっかりすると画像そのものに描き込んでしまう。画像にペイントすると、オリジナルがなくなるし、またやり直しも大変(ヒストリーで戻ることもできるが、その履歴には限界がある)。必ずレイヤーパレットのレイヤーマスクが選択されていることを確かめるようにしよう。

3.ブラシオプションを使ってみる
ブラシオプションを使ってみる

レイヤーマスクを編集するブラシツールは、その太さや不透明度、ボケ具合を調整できる。絵を描く時の筆を選ぶ要領に近い。被写体の絵柄にあわせて、適切なブラシの設定を行おう。大きな被写体には大きなサイズのブラシ、輪郭のシャープな被写体にはボケの弱いブラシなどなど。面倒でも、適切なブラシに設定して作業することで、仕上がりの品質もよくなる。急がば回れ、である。


アナログな現像でもマスクを多用してきた中野氏。レイヤーマスクの簡単さに触れ、「こんなに簡単にできるんだ、は〜(ため息)。キューバの写真のあの苦労はいったい何だったんだ、って感じだよね」。今までできなかったことが、Photoshopでは可能になる。そんな実感とともに、アイディアもわいてきているようだ。「ストレートフォトの色味調整で試したいことがある」とのことなので、次回はRAWデータの現像にトライすることに。


4.Irregular! 中野氏ペインティング開始?
今回はレイヤーマスクを編集するためにブラシツールを使ったが、もちろん、ブラシツールで色を塗ることもできる。新規レイヤーを作成し、インスピレーションの赴くままに筆(マウス)を走らせる中野氏。写真素材を活かすためのテクニックとはいえないが、中野氏はこのペイントが気に入ったようだ。「もともとグラフィックをやっていたから、こっちの方が楽しいな」(中野氏)。「せっかく8×10で撮ったのに、その上に絵を描いちゃってもったいなくないですか?(笑)」(編集部)。「うん。だってこれ、ストレス解消にいいよ(笑)。ずっとやっちゃいそう」。そういいながら、ひとしきりペイントにはまる。まだ慣れないマウスを使いながら、抽象的な線画を「ダブル」の上に描き込んでいき、だんだんと新たな作品の表情が立ち上がってくる。人とは違うこと、偶然生まれることを楽しみ、枠からはみ出していく。ただキレイな絵をつくるよりは、自分のスタイルで「なんでもあり」のクリエイティブを進む。思わぬところで中野氏の「イレギュラースイッチ」が入り、表現意欲が噴出した瞬間だった。まだまだこれは通過点に過ぎないが、Photoshopにはじめて触れて1週間、中野氏のツボを刺激したようだ。「ビデオ、ほんとによろしくね」という中野氏の、今後のデジタルクリエーションが楽しみ。
ペインティング中
to be continued.
 


 

 
中野正貴  
中野正貴:
1955年、福岡県生まれ。写真家。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン科卒業。写真家、秋元茂氏に師事。1980年頃より雑誌表紙、各種広告撮影を手掛ける。2001年、写真集「TOKYO NOBODY」で日本写真協会賞新人賞を受賞。2005年、写真集「東京窓景」で第30回木村伊兵衛写真賞を受賞。「TOKYO NOBODY」で、東京という世界有数の大都会をまったく無機質で虚無な人口物の集合体として表現し、「東京窓景」はそんな東京にささやかな温かみを与えた作品となっている。

>>www.artunlimited.co.jp/nakano/

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