プロダクトデザイン、オブジェ、空間演出、映像インスタレーション、書籍出版、etc。
ジャンルの垣根を越え幅広いフィールドで活躍する女性アーティスト、アラキミドリ。
鳥の影絵が浮かび上がる照明『PHANTOM LIGHT』や、
雑貨やスイーツが積み上げられたトーテムポール、
ささいな日用品を極彩色のケーキで作った『Junk Sweets』に、
シロクマの形をした『Polar Bear』…。
造形、イメージ、言葉が絡まり合い立ち現れてくる彼女の作品は、
懐かしく、あたたかい童話の世界のようでもあり、
どこか残酷な香りのする、少女の夢のようでもある。
雑誌『gap』の編集長という異色の経歴を持ち、アーティストへと転進した彼女にとって、
創作とはいったいどんな行為なのだろうか?
そのクリエイティブの源泉に触れるべく、
Photoshop worldはギョウザ(=封筒)のアートワークを依頼した。 |
観念的になりすぎず、作品を作ってみたい。
自分のなかからどんなものが出てくるのか、
そこに興味があるんです。 |
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Photoshopworld Staff(以下、PW)「今日は作品の進行状況をお聞きしたいと思うのですが、何を作られるか、アイディアは決まりましたか?」
アラキミドリ(以下、AM)「そろそろ作品を作ろう、と思ってから今日で5日目なんですけが、今回は積極的に作るというよりも、ピンとくるというか、(アイディアが)降りてくるまで待ってみようと思っているんです。だから具体的に作品がどんなものになるかは、まだ決まってませんね(笑)」
PW「降りてくるのを待つというのは、アラキさんの場合、どんな感じなんでしょうか?」
AM「手を動かすわけではないので、端から見たらボ〜っとしているように見えるかもしれないんですけど、作品の事を考えているから具合は悪いです(笑)。夢の中で考えるのはテスト中です(笑)」
PW「(笑)。テーマのようなものを考えてから作品を作りはじめるのですか?」
AM「その時々だと思いますが、今回はそうではないですね。でも(締め切りも迫っていて)そろそろやばいので(笑)、方向性は決めています」
PW「方向性というと?」
AM「最近、作ることに対して観念的になりやすいなと感じていて…。もちろん作品の分かりやすさも大切なんですが、たとえそれが(個人的で分かりにくいものであるがゆえに)人にとってはゴミみたいなものだとしても、自分がピンとくるものにきちんと向き合ってみたいと思っています。なので、今回は作ることが自分に作用するような、そんな作品作りにしたいですね」
PW「自分のなかの客観的な部分ではなくて、主観的な部分を使うということですか?」
AM「観念的になりすぎるというのは、客観と主観を意識しすぎるということかもしれません。そういうシャープな状態ではなくて、最近とくにボ〜っと、呆然としていることが多くて、こういう変な状態の時に自分のなかからどんなものが出てくるのか、そこに興味があるんです」
PW「呆然とした状態で出てくるもの…、分かるような、分からないような(笑)」
AM「考えない状態で作ってみるので、本当にゴミみたいなものしかできないかもしれない(笑)。もちろん、(受け手のいる作品として)コミュニケーションの部分は外さないと思うんですが、そこを意識して作るのではなくて、自分のなかへの瞑想というか、実験というか、“自分遊び”といった感じなんだと思います。多分、今回の作品は布と針と糸を使って作るんですが、先に何ができるのかが分かってしまうと、それはもう過去をなぞることになるので、“自分遊び”じゃないんです。公認されているものや分かりきったものに対して、つまらなく感じてしまうんですよね」
PW「すると今回は、いままでの“アラキミドリ”とはまた違った一面を見ることができそうですね」
AM「(創作を通して)求めているものは、きっとひとつの方向としてあると思うんです。探したいものはひとつで、なにかあるんですが、探しているうちにわけが分かんなくなることもあって、ナゾナゾ巡りみたいになってますね(笑)」 |