Column
Photoshop world Reportage
     
  アラキミドリ [Abstract Truth]  
vol.4[アラキミドリのクリエイティブ]
 
 
チクッと刺したいというか、
まろやかじゃないというか。
そういう部分が自分の中にあるんですね。
Midori Araki 2007/Photoshopworld

Photoshopworld Staff(以下、PW)
「今回の制作は、“観念的になりすぎずに”作ってみるという、アラキさんにとっても新しい試みだったと思うのですが、制作を終えてみていかがですか?」

アラキミドリ(以下、AM)「コンセプチュアルなものと、そうではないもの。この両方のバランスが大事だと思っています。今回こういう風に制作を進めたのは、自分を取り戻すというか、そういう時期だったからかもしれませんね。この先もずっとものを作っていくと思うので、作ったものと、それに対する自分の気持ちの流れ方を大切にしていきたいなと思ってます」

PW「今回は、アラキさんの中の“整理されていないもの”をカタチにする必要があったわけですね」

AM「私、海外のフリーマーケットによく行くんですね。そういうところで目を引く物って、よく分からないカタチや記号だったりするんです。あと、つまらないものや、特にいわくつきでも何でもないものを集めている人っているじゃないですか?そういう感じ、なんか好きなんですよね。一方で、分かりやすくてカッコイイものも好きなんですが、私の場合、その間を行ったり来たりしているというか、どちらかに傾くと自分で揺り戻している感じがあるんです。だから、何かにカテゴライズされるのも窮屈で、“絵本作家一本でいく!”とかはダメみたい(笑)」

PW「(笑)」

AM「もちろん、企業と仕事する場合は自分だけの作品ではないので、風通しよく、コミュニケーションしやすく作るんですが、今回は自由に作ることができたので、ちょっと意地が悪い感じになったかもしれませんね」

PW「意地が悪いというと?」

AM「チクッと刺したいというか、まろやかじゃないというか、そういう部分が自分の中にあるんですね。ちょっとイビツなものに愛着を感じるというか」

PW「なるほど」

AM「う〜ん、でも定かではないですね。別に意地悪するつもりで作ったわけではないので(笑)。今日の気持ちと明日の気持ちは違いますから、また違うこと言うかもしれない(笑)」

PW「わかりました。あくまで今日のお気持ちということでお聞きします(笑)」

AM「そうそう、今日は一昨日買ったカメラで、説明書も読まずに行き当たりばったりの撮影をしているんですが、そういう即興系が好きですね。きっと読めばすぐ分かることもあるかもしれないんですけど、でも読まない(笑)。なんか同じことを繰り返したり、同じ道を通るのが嫌なんですよね…」

PW「アマノジャク的というか、パンク魂というか(笑)、なんだか分かる気がします。さてさて、それでは最後の質問です。アラキさんは現在妊娠中ということですが、“妊娠”という状態は、作品に影響を及ぼしていますか?」

AM「もちろん影響はあると思いますよ。健康だったり、病気だったり、明るい気持ちだったり、暗い気持ちだったり。そういう状態は作品に影響してきますよね。妊娠て…、なんだろう?なんか、根を詰めない感じかな…。おおらかな感じとも違うし、決して健康的でもない…」

PW「…」

AM「どちらかっていうと、エイリアンに寄生されている感じが近いかな?」

PW「!?」

AM「自分の中に愛おしい異物がいる、そういう感じですね。でもまあ、とにかくボ〜ッとしてることが多かったですが(笑)」

PW「(笑)。今回はありがとうございました。アラキさんの今後のご活躍を期待しております」


 
 
 
アラキミドリ
 
アラキミドリ:
1990年に多摩美術大学グラフィック科卒業後、雑誌『装苑』『ELL DECO』のスタイリングを兼ねた編集者として出版社に勤務。その後、1997年にライフスタイル誌『gap』を編集長として立ち上げる。1999年のインテリアデザインムーブメント『HAPPENING』を契機に、編集周辺から離れ、デザインとアートの境界線上で制作を開始。海外でのインテリアデザインイベントにも参加しはじめる。2002年秋から、フランス政府の文化奨学給付金を得て、パリとマルセイユのアーティストレジデンスに滞在。パリとドイツのカールスルーエで展覧会を開催する。2004年に帰国し、日本での活動を再開。現在、国内外での作品発表を続けると同時に、プロダクトデザインをはじめ、オブジェ、空間演出、映像インスタレーション、雑誌の企画連載、書籍出版、企業とのコラボレーションなど、多軸に表現の場を広げている。
>> www.arakimidori.com
 

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