【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
人物撮影:女性モデルを用いた人物撮影4(小道具等:法的リスク)
稲垣 英徳
当初の予定では軽く触れるだけのつもりでしたが、原稿の執筆中に色々な方面の方々からの要望があったので、小道具について少し触れようと思います。もっとも、小道具を選ぶ際の商業カメラマンやデザイナーの方達の注意するべきtipsと言う方がいいかもしれません。

小道具は各スタジオによって区分けなどが違いますが、総合的な意味では衣装なども小道具となります。 全体的に言えば、動画、スチールのプロダクション共に全て「美術」という括りなのですが、スタジオなどの系統によってはそれぞれ分け方が異なります。日本国内においては、多くのスタジオが舞台美術がルーツである美術の人を抱えることから、比較的統一性が見られますが、最近は海外のプロダクションの形態を持ち込む方も増えています。

さらにスチール撮影の場合は、舞台興行や動画撮影のような流れでは動かないことが多いですから(一つのカットに要する時間が違うのです)、メンバーの使われ方はカメラマンの裁量による所が非常に大きいのです。スチールスタジオの多くは欧米であっても、組合とのやり取りが非常に少ない事もあり、この辺りの決まり事の統一性が弱いです。強いて言うならば、主に扱うクライエントの系統ごとにそれぞれのスタジオの判断で整備される傾向があるということでしょうか。多くの欧米の映像スタジオや舞台などが、ユニオンの系統によってある程度の区分けの統一性があるのとは大分違うのです。

スチール撮影を行うスタジオでも、筆者のような所では、必要であればオリジナルな衣装や小物などをインハウスでデザインして作る事がありますし、また、既製品と言ってもそんなに数多くない物や、既に製造されなくなり製造元も存在しなくなっているantiqueやそれらのレプリカなどを使用する事もあります。これらオリジナルな物やレプリカを作る事は、全て特殊美術に類する物ですが、それらも総じて「小道具」と括りますから、随分幅の広い事であるのが判りますね。 特殊美術などは本来は細分化されて、それぞれの事でtipsを書けるくらいであり、それぞれの分野で、専門家/職人の方がいらっしゃいますので、筆者がtipsで触れる事ができる案件は、その一部程度ということになります。

先ずここでは、本来は基本的な事でありながら、多くのデザイナーやカメラマンの方達が見落としがちな、法的な事を触れていきたいと思います。

道具とは?

写真1 【画像1】
衣装、小物などが道具として分類されます。この写真では、帽子、バッグ、アクセサリーなども道具として使われています。
一般的な理解では、衣装やアクセサリーなどの細々とした物が小道具さんの領分かと思われがちですが、乗用車やトラック等の車や重機のような特殊な物も、広義的には小道具となりますから、随分と意味が広いのです。大物では航空機や船舶など、一般的な大道具よりも、遥かに大物になることがありますから、この手の大道具、小道具の境界と言うのは曖昧であり、単に「道具」と一括してしまった方が良い事も多々あるのです。

日本国内のプロダクションは、演劇から派生した所の影響が強い事から一般的には、

・大道具:パネルなどのセット組み立て
・小道具:家具、生活雑貨、家電、持ち道具など、他には、日本でいう所のプロップなど特殊な物
・衣装:衣装担当

などの区分けとなりますが、当然ながら小道具と衣装などの区分けは、スタジオ/劇団ごとにかなり差異があります。特に、ステージ/テレビ/映画と、枝分かれした時代に存在しなかった物ほど、それらに対する判断は系列ごとに分かれますから厄介です。これは映画などが演劇から分かれ始めた頃は、未だ総合美術としての部門であったのですが、そこからプロダクションのペースや色々な日用品の変更によって担当部署が分かれていったことから、統一性が欠けるのです。

このため、道具/美術担当者が随時入れ替わりで色々な畑/系列の人が入る場合は、どの様な区分けの所で働いていたか、何ができるかなどに注意する必要があります。特に特殊美術は個人技能の差が大きいので、色々カスタムで作る必要性があるプロダクションなどでは、美術担当の人の腕がカメラマンの腕と並んでできあがりを左右することもあります。これは舞台や撮影などにおいては、既製品等が必ずしも舞台照明や撮影照明の下では見栄えが良く無いことから、見栄えを考慮した仕上げを別に作ることがあるからです。

お絵描きの世界で最も良く知られるのは、ファッションショーやハイエンドカタログ撮影などでの特別な衣装縫製ですが(その為の専門小口縫製業者がいます)、それだけではなく電化製品や自働車などにおいても、いわゆる展示/撮影向け用の仕上げなどがあります。良く知られるものでは、オートショーやカタログ撮影などに用いられるデモ車の塗装仕上げなどでしょう。メーカーの依頼を受けてメーカーの工場以上の塗装を行える、非常に高い技術の業者がいるのです。これでスタジオやオートショーなどの厳しい照明条件においても、アウトドアでの未走行新車のような輝きに見せることができるのです。

写真1 【画像2】
オートショーで展示される車の塗装は、展示/撮影目的用の塗装技術の粋を極めており、筆者的にはそちらの方を見るのも楽しみの一つであったりします。超高級車などはオプションの一つとして、デモ車の様な塗装仕上げを選択できる所もあります。
オートショーの車ほどではありませんが、ファッション撮影などではモデルさんに使われる衣装や小物なども、量産品に似ていても実は違う物を使うことなどが多々あります。日本ではいわゆるプレタポルテに類する物が使われたりすると言えば良いでしょう。小規模量産の良品を用いることで、本来の大規模量産品では不可能な丁寧な縫製をされた物を使う訳です。もちろん大抵の量産される服は、非常に背の高いモデルさん達の体のサイズに合わせた物を売り出しても採算がとれるほど売るのは難しいですから、必然的にモデルさん達用の特別縫製の服や小物を作ると言うことになるのです。

低予算のプロジェクトではそのような特別仕立ての衣装/道具を用意することは難しいですが、近年はPhotoshopのおかげで、スタジオ照明と相性の悪い物でも、比較的簡単に的確な色などを出せるようになってきました。以前ほど現物の撮影用プロップに頼る必要性はありませんが、それでも人物撮影などの時は重宝することが多いのです。
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  稲垣 英徳   2007.12.30

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