一般的な理解では、衣装やアクセサリーなどの細々とした物が小道具さんの領分かと思われがちですが、乗用車やトラック等の車や重機のような特殊な物も、広義的には小道具となりますから、随分と意味が広いのです。大物では航空機や船舶など、一般的な大道具よりも、遥かに大物になることがありますから、この手の大道具、小道具の境界と言うのは曖昧であり、単に「道具」と一括してしまった方が良い事も多々あるのです。
日本国内のプロダクションは、演劇から派生した所の影響が強い事から一般的には、
・大道具:パネルなどのセット組み立て
・小道具:家具、生活雑貨、家電、持ち道具など、他には、日本でいう所のプロップなど特殊な物
・衣装:衣装担当
などの区分けとなりますが、当然ながら小道具と衣装などの区分けは、スタジオ/劇団ごとにかなり差異があります。特に、ステージ/テレビ/映画と、枝分かれした時代に存在しなかった物ほど、それらに対する判断は系列ごとに分かれますから厄介です。これは映画などが演劇から分かれ始めた頃は、未だ総合美術としての部門であったのですが、そこからプロダクションのペースや色々な日用品の変更によって担当部署が分かれていったことから、統一性が欠けるのです。
このため、道具/美術担当者が随時入れ替わりで色々な畑/系列の人が入る場合は、どの様な区分けの所で働いていたか、何ができるかなどに注意する必要があります。特に特殊美術は個人技能の差が大きいので、色々カスタムで作る必要性があるプロダクションなどでは、美術担当の人の腕がカメラマンの腕と並んでできあがりを左右することもあります。これは舞台や撮影などにおいては、既製品等が必ずしも舞台照明や撮影照明の下では見栄えが良く無いことから、見栄えを考慮した仕上げを別に作ることがあるからです。
お絵描きの世界で最も良く知られるのは、ファッションショーやハイエンドカタログ撮影などでの特別な衣装縫製ですが(その為の専門小口縫製業者がいます)、それだけではなく電化製品や自働車などにおいても、いわゆる展示/撮影向け用の仕上げなどがあります。良く知られるものでは、オートショーやカタログ撮影などに用いられるデモ車の塗装仕上げなどでしょう。メーカーの依頼を受けてメーカーの工場以上の塗装を行える、非常に高い技術の業者がいるのです。これでスタジオやオートショーなどの厳しい照明条件においても、アウトドアでの未走行新車のような輝きに見せることができるのです。