【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
人物撮影:女性モデルを用いた人物撮影4(小道具等:法的リスク)
稲垣 英徳
撮影小道具と、法的な問題
写真4 【画像4】
代理店やデザイン事務所や出版、マスコミを通した広告は自主規制でチェックされていますが、小口のフリーランスなどが手がけるプロジェクトでは、その様な自主規制や法的な制限を無視した要望がクライエントから出される事があります。法的に問題があると判断した場合は断る事が肝心です。
一般的な低〜中規模予算の商業撮影の場合は、クライエントもしくは、スタイリストの方が色々モデルさんの衣装に合わせて調達する事になりがちで、大抵の商店やカタログの撮影においては、店舗で扱う売り物などを小物や衣装として身につけて撮影に挑むこととなります。

少なくとも、店舗がそれらの商品を正規の小売り販売店の契約を結んで扱っている限り問題はないのですが、例えばデザイナーブランドの多くは、商標権などの扱いにおいて複雑なガイドラインがあることが多いのです(ショップ独自の撮影を正式に許可した場合など)。それに沿わない使い方を行った場合はトラブルになりやすいことがあります。そのため、それぞれのブランドの扱いなども本来はかなり注意して行うべきものなのです。クライエント側が今まで黙認されていたから大丈夫という風に説明する事もありますが、黙認と正式な承認とは法的には天と地ほど差がありますので、そのようなリスクを負うべきではありません。

また、一般論ではありますが、使用する衣装や道具の販売を目的としない、通常の撮影の道具として使用する場合は、基本的には商標等が明確に判らないように撮る、または撮影後に処理する必要があります。商標権の侵害としてどの様な理由で訴えられるかわかりませんし、なるべくその様なことは避けたい物です。これがプロップ用に加工された物を買ったり、撮影後にPhotoshopで処理したりする理由です。
撮影小道具と、法的な問題
写真5 【画像5】
プロップ用に簡易加工されたカメラの例。 ブランドのロゴなどの表記が省かれていますね。大抵の物は関連業界のクライエント向けでない限り、この程度の処理でも問題はないですが、例外も色々あります。代表的な例外としては、商品形態の権利に関わることであり、特に形態の一般認知度の高い品物などの場合は避けた方が無難です。
どの様な基準に沿えば無難かとの質問を良く訊かれますが、ケースバイケースな事もあり、厳密な所はその分野の専門家である弁護士などに訊くべきです。ある一定規模の商いを行うようになったら、その分だけリスクが増えると言う事もありますので、顧問弁護士を持ったり、カメラマンやデザイナー専門のエージェントや、契約や権利関係の確認の為の法務担当スタッフなどを入れるべきなのです。

弁護士なども毎年の顧問契約を結んでいればそこ迄割高ではなく、色々な案件を定期的に相談することで相談コストを分散できます。一つの撮影につき(顧問契約の差もありますが)、ちょっとした機材などのレンタルコストに近い程度で相談ができることもあります。これならば、予備機材を手配しておくコストと大差ありませんし、クライエントの不当要求などに対する防御線としても非常に良いものとなります。

例えを挙げるなら、クライエントが鉄筋を抜けと言ったから安全上の法規に反する所まで鉄筋を抜くのはプロの建築士としては失格であるのと同じに、知材を生み出すプロで在るカメラマンやデザイナーは、他者の知財も法律の定めている範疇で明白な所(知材のグレーエリアについては、政治や、哲学的な問題があるので、ここでは触れません)ではきっちり擁護するべきですし、クライエントの不当要求でなにもこちらまで、訴訟のリスクを背負うこともないのです。
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  稲垣 英徳   2007.12.30

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