【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
人物撮影:女性モデルを用いた人物撮影4(小道具等:法的リスク)
稲垣 英徳
色々な法律の理解は何処で得るか?

本来は顧問契約をした弁護士などのお話を聞く事を勧めますが、とりあえず基本的な理解を得るには、ちょっとした法律学の講義などを聴講するのも一つの手段です。また、特許庁などの所轄省庁のサイトでは簡単な知的財産に関する説明のページもありますので、そのような所で基本的な知識を得てから、自らの案件について取り組むと理解が早いでしょう。語学力が在る方は、欧米などのお役所のサイトを見てみるのもよいでしょう。登録された特許や各種知的財産の情報や判例などを比較的安易に検索できるようになっていますので、非常に為になります。日本のサイトでも知財に関わる弁護士の方がコラムやブログサイトを運営していたりもしますので、それらをキッチリ読んで基本理解を深めてはいかがでしょうか。

向学心のある方は、大学の法学部などの初歩から専門的な講義までをきっちりと時間をかけて聴講しに行くのも良い考えです。また、色々な知財関連の団体が行っているセミナーなどに参加するなどの方法もあります。セミナーは弁護士や弁理士の方向けの非常に難易度が高いものもありますが、セミナーによっては一般の知材産業従事者の方に判りやすい噛み砕いた内容のものもあります。大学や大学院などにおいて、法律学などの勉強をした事がない人は、このような素人向けのセミナーの所から入ると難解な法律用語が飛び交うことなしに、きちんと説明して貰えますのでわかりやすいでしょう。
また、聴講したりセミナーに出席したりする時間がない人は、薄い本一冊程度の指南書の類いを読むのでも良いでしょう。

それぞれの書籍ごとに色々違った角度から追求した内容を書いていますので、その辺りは基本的理解の参考にもできるでしょう。ただし自らのケースに合った内容を見つけるのは、Creativeの業種の性質上、難しい事が殆ど(完全な模写/模倣の仕事でもない限り、お絵描き業と言うのは、クライエントに合わせたユニークな物を作るのが仕事です)である事は忘れてはいけません。自らの判断に不安がある場合は、専門家の判断にゆだねるのが妥当です。

予算の制限や運営資金の関係から法律の専門家に相談できない場合は、なるべくリスク回避の方向で動く習慣をつけることも大事です。

また、法律の世界も日進月歩ですから、ある程度学んだ事がある人でも最新の判例などに基づいた判断などは、実務の専門家の意見を聞く必要があるでしょう。

無難な基準とは?
写真6 【画像6】
リスク回避をしながら撮ると、その分制限も増えて来るので難易度が飛躍的に上がりますが、それをなんとかするのも仕事の内と言えます。
このtipsで書いていることも本来は知的財産専門の法律家に訊くべき事ですので、ここでは一般論だけになりますが、大抵の場合は欧米の大手ストック写真エージェンシーの納品規定に近い条件を遵守していると、大方においては問題ありません。特にロイヤリティフリーの納品規定を通る写真というのは、当たり障りがなく、訴訟リスクが殆どない無難な物のみ受け入れますから、この辺りのガイドラインは法的な見地から、最も無難な線のものとなります。撮影に使用する道具なども、この納品規定のガイドラインに沿う様に準備すれば、間違いは少ないでしょう。
ただ、その分踏み込んだ使い方、見せ方はできませんから、もう少し細かい判断が必要な時は、やはり専門家に相談するのが最も安全ですので、その辺りの事の確認を怠らないことが肝心です。もちらんこれだけでは判り難いですし、契約書やガイドラインなどを読むのが苦手な人も多いことから、もっと単純明快な判断基準はないかと専門家の方に伺ってみた所、こんな解釈を貰いました。

判りやすい基準を述べれば『道具などの商標が写り込んでいる内容が、少しでも使用した物の元メーカの気に障る内容だったら、訴えられる恐れがある』という基準です。つまり、気に障る様な使い方をされる可能性が将来的にもあったら、それは撮影者にとってのリスクということになります。
また、使い方には問題がなくても、使用したモデルがNegative Publicityを起こした場合、それだけで訴えられることもあるのですから、用心するに超したことはありません。

ここを怠ると、たとえ大手の企業といえども、多大な金額が絡む訴訟に発展することもあります。

今年(2007年)に入って、この所お騒がせな話題の多い某歌手が、自身のMusic Videoで小道具として用いた物のメーカーから、許可されていない商標の使い方を行ったとして訴訟を起こされた例もあります。この案件では、歌手、Music Videoの版権の所有者、及び発信者側が、裁判で敗れた後に賠償金を商標権の保持者に支払い、ビデオの発信を差し止めるということで訴訟は収まった様です。この例でも判るように、商標権を保持する側は厳密に商標イメージを管理していますから、その商標の使われ方や、使った撮影の内容、さらには使用した人間のイメージが商標のイメージ沿わないからと言って起こす訴訟もあるということです。制作者側からすれば、高額な制作費と億単位のプロモートための出費が全くの無駄になってしまったという大打撃ですから、小道具一つと言って馬鹿にはできないということを肝に銘じるべきでしょう。

本来は相手が嫌であろうことは避けるというのは、世間の常識的な判断の範疇ですが、クライエントによってはその様な常識的なことを踏み越えてしまいたがる方もいますし、モデルさん達も基本的にはまだまだ間違いを起こしやすい若い子達ですから、色々神経を使うことになります。特に上記の例の場合は、昨今お騒がせの多い某歌手のNegative Publicityを商標権の所持者が嫌ったと言う側面があったわけですから、制作者にとって法的なトラブルというのは、なかなか難しい問題なのです。

経験の浅いスタイリストや道具の人などにも注意をしていないと、こちらの目が点になるような法的に危険な選択をしてくることがあります。同じように、他のカメラマンやデザイナーの方達とコラボする場合も十分な注意が必要です。畑違いの人とコラボする場合、厳しさへの理解が大分変わってくるからです。例を述べれば、趣味の同人活動の一環としてのコスプレなどの撮影会の責任リスクと、お金を貰って行うプロ、セミプロの商用撮影の責任リスクと言うのは極端に違うのです。版権や他の各種知的財産権がある物を気軽に(個人サークル内だから、と)無断使用するスタンスで、撮影で金銭のやり取りがある商業撮影に挑んだら当然、いくら裁判費用があっても足りない位のトラブルに巻き込まれるでしょう。

勿論その辺りをわきまえている方達は読者の方達を含めた大多数だと思いますが、ネット上の物などを見ているとプロ、セミプロのカメラマン、デザイナー、またはスタイリストや道具の方でありながら、そうでも無い方もいらっしゃる様ですので注意が必要なのです。


撮影協力 Model: shima Make: shima Hair: Azu Style: Karen Iseki

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  稲垣 英徳   2007.12.30

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