2007年は、現代アート好きにとっては「当たり」の年である。2年に1度開催の現代美術の祭典「ベネチア・ビエンナーレ」(イタリア)、世界最高峰のアートフェア「アート・バーゼル」(スイス)、5年に1度開催の国際展「ドクメンタ」(ドイツ、カッセル)、そして10年に1度開催のパブリックアートの祭典「ミュンスター」(ドイツ)が、同時期に連続して開催されるのである。この一連の国際展、ないしはアートフェアを見ることによって、アートファンは、アートシーンの最新情報を知り、同時に今後の動向を占うことができる。
今回、私は6月7日のヴェネチア・ビエンナーレのオープニングから欧州に入り、その後アートバーゼル、ドクメンタにまで足をのばして、見聞を広めてきた。そして、私は、今回の一大アートイベントを通して見ることで、現在と今後のアートシーンについて、ある推測を抱くに至った。
「現代の作家において、もはやピカソは重要ではなく、より重要なのは、マティスなのではなかろうか。」
ピカソが「20世紀最大の画家」とされてきた最も大きな理由は、作品のコンセプトと強度においてである。一方、より感覚的で軽い作風のマティスの作品は、20世紀を貫いたコンセプト重視の傾向から、ピカソに比べ特に学問的な意味において軽視されてきた感があった。つまり、雄弁でプロモーション能力に長けていたピカソに対して、マティスの革新性があまり認められてこなかったのである。
※2002年、テートモダン、グランパレで開催された「マティス・ピカソ展」は、多くの作品で、ピカソよりもマティスが先駆者であったことを証明した(01、02)。