 |
 |
 |
 |
 |
ここ数年、アートの価格が高騰している。特にコンテンポラリーアート(戦後美術、同時代美術)の価格は、2003年を基準にすると、今年までのたったの4年間でほぼ倍という急騰ぶりである(01)。
|
 |
|
01:「メイモーゼス美術指標」(出展:www.beautifulassetadvisors.com)
※S&P500は、アメリカの代表的な株価指数 |
これはアメリカの株価の上昇をはるかに凌駕する数字であり、世界中の富裕層の資産がアートに流れていることを表すものといえる。昨年11月、ジャクソン・ポロックの初期作品「No.5
1948」が、絵画取引史上最高金額となる1億4000万ドル(約170億円)で取引され、関係者を驚かせた(02)。今年の5月には、ニューヨークのササビーズで、マーク・ロスコの作品「White
Center(Yellow, Pink and Lavender on Rose)」が、コンテンポラリーアートとしては史上最高額の7280万ドル(約87億円)で落札されている(03)。 |
|
|
|
 |
|
02:Jackson Pollock「No.5 1948」 |
03:Mark Rothko 「WHITE CENTER (YELLOW, PINK AND
LAVENDER ON ROSE)」 |
そして、世界No.1の現代美術ギャラリーGagosianに所属を移し、先日同ギャラリーにて個展を行った村上隆は、初日で約40億円の売り上げを記録したという。例えば、床に置いたキャンバスに上から絵の具を垂らしただけのポロックの作品に、170億円を費やす感覚は、おそらくほとんどの日本人には理解し得ないことであろう。
こうした状況を支えているのは、世界中のヘッジファンド経営者、IT起業家などの、ニューリッチ層である。いわば新参者のアートコレクターである彼らがコレクションしているのは、印象派などのモダンクラシック以降のモダンアート及びコンテンポラリーアートである。彼らがアートを購入している理由は、大きく二つある。一つは、アートを買う事によって、社会的なステイタスを得るためである。新興富裕者である彼らにとって、社会的な名誉や信用を得る最も簡単な方法の一つは、アートを買う事である。ダ・ヴィンチの手記を所有しているビル・ゲイツの例に習うまでもなく、欧米の保守的な富裕層社会では、文化人であることは、ある意味当然の義務なのである(04)。
|
もう一つの理由は、投資である。例えば、ピカソやマティスなどを若手の時点で買っていれば、後に莫大な利益を生んでいたという事実を、歴史は既に証明している。審美眼を備えた資産家にとって、アートは株や不動産にも劣らない有力な投資対象なのである。
では、このアートバブルはいつまで続くのだろうか。ギャラリーの立場からすれば、永遠に続いて欲しいと思うのが正直なところだが、おそらく遅かれ早かれ、終息していく可能性が高いだろう。こうした短期間での大幅な価格変動は、好調な世界経済の状況を直接的に反映してのものであり、特に現在好調なユーロ、アメリカ、中国などの経済状況が一変すれば、その影響を受けることは必至であろう。
|
|
 |
04:Leonardo Da Vinci 「The Codex Leicester」
|
とはいえ、良い作品が相応の価格で取引されるという図式は、昔から変わりない。アートには、ロジックでは証明できない価値があり、そのことを知っている人々は数多くいる。もし、文化芸術がなかったとしたら、人間の歴史は非常に退屈なものになるだろう。そう、例えマーケットがどうであれ、人の営みがある限り、アートは永遠に不滅なのである。
参考:artprice.com 、artnet.com 、「COURRIER Japan 2007 #031」
|
|
|
NANZUKA( NANZUKA UNDERGROUND) |
1978 年東京生まれ。早稲田大学第一文学部美術史学専修卒、早稲田大学文学研究科美術史学専攻修士課程満期退学。
2005 年現代美術ギャラリーNANZUKA UNDERGROUND 設立。 |
|
|