Column
Photoshop world Reportage
     
  Joe Satake [Schnabel Effects]  
vol.3 [スゴイです、サタケさん!]
 
 
シルクスクリーンは“味” が命。ウォーホール・スタイルで刷り上げる
サタケさんの“アジアジ・シルク” の極意とは?

SE「まず私はキャンバスを地べたに置いて刷るんですが、これはAndy Warhol がやっていたのと同じスタイルです。このほうが粗い感じの、“アジアジ(=味味)” な刷りになります」

PW「たしか〈Schnabel Effects〉という名前は、映画「バスキア」の監督をした、画家であり、ウォーホールの親友であるジュリアン・シュナーベルからとられているんですよね?」

SE「ウォーホール、好きなんですよ。(サタケさんのお部屋にはウォーホール人形が飾ってあります)。で、まず一版目ですが、今回は下地になるような抽象的な構図の版を、銀色で刷ります」

PW「なるほど、メインの版とケンカしないように、抽象的な構図のモノを、文様的に下地にひくわけですか?」

SE
「そうですね、だから一版目はカンで位置を合わせる感じで刷ってしまいます」

PW「インクは何色くらい使われるんでしょうか?」

SE
「だいたい2〜3 色です。今回はこの銀色と、光沢のあるブラックとマットなブラックの3色を使います。二版目からは原稿をキャンバスに載せて、ちゃんと位置を確認してから刷りはじめますよ」

PW
「二版目は先ほどPhotoshop で作ったメインの版ですね」

SE「これはとにかく頑張って粗く刷ります(笑)。マスキングして、きちんと出るところと出ないところを調整したりもしますね。あと、刷りのポイントはインクの固さ。柔らかすぎるとベタッと刷りすぎてしまうので、ちょうどいい固さのインクが、良いかすれ具合を出すポイントなんです(インクを垂らし、手早く刷るサタケさん)」

PW
「程よいかすれ具合を出すためには、かなりテクニックが必要ということですか?」

SE「(シルクスクリーンは)それが命みたいなところがありますから(笑)。だからアシスタントを使って制作するということができないんです。今回のゾンビは特に要素も多いし、サイズも小さいので、相当なテクニックが必要ですね」

PW「サタケさんは、ずっとこの風合いを生かすような質感を追求されてきたわけですか?」

SE「いや、昔は8 版くらい使って、とにかく正確に、むらなく、きちんと刷り上げるテクニックを追求していた時期もあります。だから私、刷るのは得意なんですよ(笑)。でも、例えばシルクスクリーンの良さって、リクエストに合わせて写真を入れたりできるんですけれど、写真をそのまま大きくすると、ビジュアルが強くなりすぎてしまうんです。私は今、特に大きい作品を手掛けることも多いですし、むらなく、きちんと、より風合いを活かす感じがね、必要なんじゃないでしょうか(笑)」


インクを垂らしたあとは、スクイージで一気に刷り上げる。緊張の瞬間でもある。

目の前に現れた本物のシルクスクリーンはやはり美しい!
いとも簡単に刷り上げていくように見えながら、3 版刷るのに2 日はかけるというサタケさん。版の位置、インクの載り、かすれ具合…。理想的なバランスが生まれるまでは妥協を許さず、何度も刷り直し続けます。もちろんシルクスクリーンは重労働なので、体力と精神力が問われる作業。
サタケさんの緻密なテクニックに裏打ちされた“アジアジ” な表現は、年月をかけて積み上げた経験と、奇才と称されるその厳しい審美眼があってこそ、初めてなせるクリエイティブなのでした(納得)。最後になりましたが、〈ポストカード〉についてもお話を伺いました。
PW「このアートポストカードのベースは1900 年代初頭のフランスで実際に使われたハガキなんですよね」

SE「はい。海外の骨董屋で、雑誌用にトリミングされた写真や、こういう古いハガキなんかを買ったりしていたもので。機会があったら使ってみたいなと思っていました」

PW「サタケさんのトレードマークともいえるウサギが登場していますね。食べ物と一緒なところが意外性があってカワイイです」

SE「エビフライとベーコンは永遠のモチーフですから(笑)」

PW「ウサギを描かれるようになったきっかけはあったんですか?」

SE「私、そのカッコイイ系なセンスにあまりピンとこなくて。それよりもカワイイ系の方が分かるというか…」

PW「それでウサギ…?」

SE「もっといろんなキャラクターもいるんですけどね。ウサギ、大好きですよ(笑)。描いてみましょうか?」

と言いながら、おもむろにウサギを描き出すサタケさん。タブレットのフリーハンドでウサギは描かれているのでした。

SE「フリーハンドじゃないと、カワイクならないんです。あと、ポイントは“目” なんですが…(描き描き)、ほら、“星” を入れてあげればカワイサUP ! そして…、ここからはプロの技ですよ(エッヘン)。影をつけて、動きのある線を入れてあげれば…」

一同「カワイイ〜!!!!!!!!!!!!!!!!!」

SE
「プロですからね(笑)」

古い印刷がなんとも雰囲気のあるフランスのハガキ


と、またしてもサタケさんのサービストークで一同爆笑のうちに幕を閉じさせていただいた第三回。急遽開講となった「Schnabel Effects のシルクスクリーン講座」はいかがでしたでしょうか?
次回はサタケさんの作品が内装に使われている建築途中のお屋敷に、極秘潜入取材ルポが決定!
どんなお屋敷に作品がどのように活かされているのか、本邦初公開となるサタケさんの現場にこうご期待!
 
 
 
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