Column
Photoshop world Reportage
     
  永戸鉄也 [Collage]  
vol.1 [コラージュというスタイルをより強くしていきたい]
 
       
UAの最新作『Golden Green』や、櫻井敦司(BUCK-TICK)、サザンオールスターズ等のCD パッケージデザインでも知られるアートディレクター/グラフィックデザイナー、永戸鉄也さんは、Photoshop を使った“デジタル・コラージュ” で注目されてきたアーティスト。
そして今回のPohtoshop world のギョウザ(=封筒)のアートワークには、実は同時に作り続けてきたという知られざる“アナログ・コラージュ” 作品を発表してくれました。緻密なダイナミズムともいうべきデジタル・コラージュと、よりナチュラルな遊び心とリズム感があふれるアナログ・コラージュ−−−そんな永戸さんならではの“コラージュ” というスタイルに行き着くまでのバックボーンとは? その子供時代から、ドロップアウトした渡米時代、そして帰国後、自力で仕事を回し始めるまでの話を、永戸さんに伺ってみました。
とりあえず美術的なものを創らなきゃいけないっていう
強迫観念が子供の頃からあった
都心の喧噪とは無縁の住宅街に永戸さんのアトリエはあります。高い天井と窓から降り注ぐ日光が快適なアトリエには、永戸さんのクリエティブの一端が垣間みれるものがたくさんありました。

Photoshopworld Staff(以下、PW)「そちらの棚にかなり古い雑誌の『暮らしの手帖』がたくさんありますね」

永戸鉄也(以下NT)「これは親戚とかから貰ったものですね」

PW「そういう古いのをわざわざ貰う感じなんですか?」

NT「そうですね、引っ越しするときにごそっともらってきたり。あの辺に積んである古い外国の本とかもそうですね」

PW「そういうのをぴりぴりやってコラージュしちゃうんですか(笑)?」

NT「ぴりぴり全部やっちゃいますよ(笑)。基本的に何でも切るようにしてます」

PW「それは子供の頃から?」

NT「いや、そうでもないですかね。ただハサミを使うのはすごい好きでしたけど」

PW「じゃあ小さい頃から絵を描いたり、ハサミを使ったり、モノを作る人を目指してたんですか?」

NT「気づいたときから絵も描いてたし、いろいろ好きでやってたんですよね。実家が木工所だったんで、木を削って何か作ったりしてましたね。何か美術的なものをやろうとは思ってたんですけど、ただ、どうやったらなれるのか分からなかったから---とりあえず、でも作らなきゃいけないっていう強迫観念が子供の頃からあって(笑)、それで作ってましたね」

PW「その強迫観念というのは?」

NT「それは、僕が子供の頃に、25〜26 歳くらいで白血病で死んでる叔父がいて、その人はものすごく早熟で、宗教やデザイン、美術、音楽とかをやってたんですよ。僕が4〜5 歳くらいで亡くなってるんでそんなには関わってないんですが。その人の残したいろんなものが実はこのアトリエにもあるんですけど。で、子供の頃に、その人の遺志を継がなきゃって思っちゃって(笑)。
それで強迫観念に駆られてモノを作ってたっていうのもあるんですよ。でもどうしたらいいのか分からなかったのと、あと学校がダメだったんですよ。美術を教わるとか、そういうことを完全に否定していて(笑)。こういうことは教わるものじゃない、みたいなヘンな反骨心があって。
だから、どうにか自分でやらないといけないって自分の中で勝手に決めてたっていうか…」

PW「とても意志が強かったんですね」

NT「そういうところだけなんか強くて」

PW「たとえば有名な作家に出会って、ああ、自分もこういうのやりたいってその道を進むタイプと、そういうのがまったくないタイプがいますけど…」

NT「後者ですね(笑)。いや、でも尊敬するアーティストはいるんですよ。でもその人はもう死んでて、弟子になれないとか」

PW「ゴッホなりピカソなりダリだったら弟子になってもいいけどみたいな(笑)」

NT「だったらね(笑)。あと、なんか普通に学校に行って習ってたら、上に行けないんじゃないかなとも思ってたんですよ。その枠の中から出られないかもしれないって。だから美大とか美術学校っていう選択肢は自分の中になかったです。それに子供の頃から作り始めてたから、いまさら学校に行って教わろうっていう段階でもなかったんですよね」

古い雑誌や書籍が並ぶ、趣のあるアトリエ

快適なアトリエ内で作業中の永戸さん

       

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