Column
Photoshop world Reportage
     
  永戸鉄也 [Collage]  
vol.1 [コラージュというスタイルをより強くしていきたい]
 
 
スキャナーで取り込むという作業が、すごい衝撃でしたね。
直接自分が乗って足をスキャンするとか(笑)
PW「高校出てからはどうされたんですか?」

NT「高校は普通の高校に行って、でも大学はどこも受からなくて(笑)。それで英語の勉強をするという名目で親に頼んでアメリカに留学させてもらったんです。でも向こうに行ったらずっとグレイトフル・デッド(※アメリカのヒッピー/サイケデリック・カルチャーを代表するバンド)の追っかけをやったり(笑)、あと絵を描きながら音楽にどっぷりつかって。で、その後一回帰ってきて、またニューヨークに行ってとかいろいろあるんですけど、最終的には(約4年半いた)アメリカはもういいやって思って、日本に帰ってきて仕事をしようと」

PW「それはまたどうして?」

NT「単純に仕事がしたくなったんですよ、日本で(笑)。これじゃあ、まずいだろって(笑)。そこからですね、コンピュータさわるきっかけがあって、それで買って」

PW「では、本当に独学なんですね」

NT「独学ですよ、完全に。だってphotoshop とかillustrator の“朝練” してたもん(笑)。バイト行く前に2 時間くらい早く起きて、マニュアル見ながら朝練をして(笑)。最初のパソコンはPerforma(パフォーマ)だったかな。photoshop も3.0 とかその頃で。全然分からなかったんですけど、とにかく“描ける” ってことにびっくりして」

PW「レイヤーがないから、何パターンもセーブして残すっていう、そういう時代ですね(笑)」

NT「そう。でも男らしい使い方ですよね(笑)。コマンドZ もないし、レイヤーもないし」

PW「一発勝負みたいな(笑)。でも直感的なのが Photoshop のいいところですよね」

NT「そうですよね。あとスキャナーで取り込むという作業が、すごい衝撃でしたね。最初に使ったスキャナーなんて、直接(ガラス製の原稿台に)何か塗ってみたりしてたし(笑)。あと自分が乗って足をスキャンするとか(笑)」

PW「コピー機並ですね(笑)。じゃあその頃から仕事としてデザインを始められたんですか?」

NT「そうですね、営業して持ち込んだりっていうのを繰り返して。でもここ数年ですよ、ちゃんと回るようになったのは」

PW「CD ジャケットで最初に手がけた方は誰だったんですか?」

NT「有名な人だと、角松敏生さんが最初かな。その後に、AD、デザイン、アートワークをはじめて全部やったのがBUCK-TICKのヴォーカルの櫻井敦司さん。そこからだんだん(仕事の)流れが出来てきて」

PW「その頃はどこか会社に属してたんですか?」

NT「いや、実は一回も属したことなくて(笑)」

PW「すごいですね」

NT「ていうか、まあ、そうなっちゃったんです。属せないんです(笑)。子供ができて、でも仕事もなくて、かみさんから『どうすんの?』とかギリギリまで責められて(笑)、『じゃあ就職する』って、そんな時期もあったんですけどね。『もう絵とかやめるから』って家族に宣言して…でも結局、いろいろあってできなかったです(笑)。だからもういい、どこかに属するとかダメなんだ自分はって(笑)」

PW「あきらめた(笑)」

NT「これを続けていくしかないんだって」

PW「その辺りから制作においては、コラージュで作っていくスタイルが主流になっていくんですよね?」

NT「そうですね。こういう仕事のスタイルになってからは常にデジタルのコラージュをやっているので、結局それが自分の中の一本の軸になっていて」

PW「なるほど。ちなみに、ちょっと何か違うこともやってみたいとか、考えられたりもするんですか?」

NT「それが紙の(アナログ・)コラージュとかマクロレンズで撮影した作品なんですよ。だからすごい違ったことをしようとは思ってないですね。より(いまのスタイルを)強くしていきたいというのがあるんで」
どこにも属さずに己の信念のみで我が道を歩み続けてきた永戸さん。お話を伺ううちに、葛藤を通り越した境地の中でクリエイティブの作業をされているんだなぁ、と感じました。
そんな永戸さんのデジタルでの作業は至ってシンプルでありながら、それゆえの奥深い思考をなさっているのがわかります。今回ギョウザに封入されたB2 サイズのポスターにもなっているデジタル・コラージュ作品をはじめとする代表作が、実際どのように作られているのか、そのスタイル解剖は、映像でお送りします。

「歩幅」

「距離」
 
 

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永戸鉄也
 
永戸 鉄也:
アーティスト・アートディレクター・グラフィックデザイナー。1970年東京都生まれ。高校卒業後渡米。帰国後、96年より、音楽、書籍、広告の分野でアートディレクション、グラフィックデザイン、映像制作に携わる。2003年、第6回文化庁メディア芸術祭デジタルアート(ノンインタラクティブ)部門・優秀賞受賞。同年、トーキョーワンダーウォール公募2003・ワンダーウォール賞を受賞し東京都庁での個展を成功させるなどその活動は多岐にわたる

>>www.nagato.org/


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