前回は、コラージュ・アーティスト永戸鉄也を知るためのイントロダクションとして、その子供時代から実際にデザインを仕事として始めるまでの、かなり破天荒なストーリーを伺いました。
そこで今回は、そもそも「コラージュ」という手法に向かったきっかけや動機、またその作風はどんなふうに移り変わっていったのか、その辺りに焦点を絞って話しを聞いてみました。
ダリ |
Photoshopworld Staff(以下、PW)「帰国してPCを使い始めた頃って、憧れのアーティストやお手本にするような作家はいたりしたんですか?」
永戸鉄也(以下NT)「同時代の作家ですか? いや、いないですね」
PW「じゃあ同時代以外では?」
NT「ずっと一貫して好きだったのは(サルバドール・)ダリですけど。それ以外は、みんなそれぞれいいなとは思うけど、あんまり興味がないというか。現代美術にも興味なかったし、ギャラリーに行って鑑賞するっていうのも、そんなにしなかったから」
PW「そうなんですか。ダリは昔から好きだったんですか?」
NT「ダリは小学校の頃から」
PW「あ、そんな昔からですか」
NT「教科書に出てた作品を見た頃からですよね。時計トロ〜ンって、あの絵(「記憶の固執(柔らかい時計)」1931年)を知ったときから、ずっと」
PW「ダリはどこかの展覧会で見たりもしたんですか?」
NT「本物を見たのはフロリダに留学してたときですね。セントピーターズバーグにダリ・ミュージアムっていうのがあったんですよ。そこってダリの作品をいちばん持ってるミュージアムで。そこはよく行きましたね」
PW「どうでした?」
NT「彼の場合、絵がむちゃくちゃ上手いからねーーー絵がうまくないからなあ、自分の場合って(笑)」
PW「え、上手くなかったんですか?(笑)」
NT「やっぱりあの人の上手さってハンパじゃないじゃないですか。小さい作品もあるし、でかいのだとここの天井くらい大きいのも普通にあるんですよ。で、教科書の中で見てたのが、実はそれくらいの大きさだったとか。で、その絵を描くのに使ってた絵筆ってうのも展示してあって、太いのとか細いのとかあって、それでいちばん細いのは毛が一本なんですよ」
PW「へえー」
NT「毛、一本を使ってどこか描いてるっていうぐらいまで描き込めるわけじゃないですか。(自分のイメージを)そこまでコントロールできるなんて素晴らしいなって。あと、やっぱり技術と発想が両方ともなってるから(僕もここまで)好きなんだなあって思って」
PW「常人の域じゃないですよね」
NT「ないですね。あとダリも映画やったり、自分が写真に出ちゃったりして、その辺の不思議な感じも好きなんですけど」 |

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サルバトール・ダリ
記憶の固執(柔らかい時計)」1931 年 |
永戸さんの作品「筆」 |
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