Column
Photoshop world Reportage
     
  永戸鉄也 [Collage]  
vol.4 [ オープンになるということ ]
 
       
破天荒なことをやって美術が成立すること自体がすごく嫌になってきた
アナログコラージュ作品を、さらにマクロレンズでスチール撮影して制作した作品群(未発表)
アナログコラージュ作品(未発表)
Photoshopworld Staff(以下、PW)「そこでオープンになったことで、向こうからのアプローチもどんどん呼び込めたということなんでしょうか?」

永戸鉄也(以下NT)「そういうところもあると思うんですよ。実際そういった話しに対してうまくリレーションを取れるようにもなっていたし、自分のディレクション能力もついてきていた時期だったので。それまでこだわっていた中で出来た作品やデザインも、オープンになったことで、一気に仕事として発表することができたんです」

PW「おもしろいですねえ。じゃあ、こっち側の気分ひとつなんですかね?」

NT「そう、だから自分の思い方って重要なんだなって(笑)。あとイメージしたり、それを言ってしまうことが、どれだけ人がその方向に向かっていくきっかけになるかっていうことも学びましたね」

PW「というと?」

NT「言うことにしてたんですよ。たとえば『AD になるから』って奥さんや友達に言ってたんですけど、『なんで絵を描いてる人がディレクションとかできるの?』とか言われて。『でもオレ、たぶんできるもん!』とか言ってたんです(笑)。結局その2 年後にその通りになったんですよ。だからいまも何年後にどこで何やるかっていう目標を言ってますね。そうすると、だんだんそこに照準を合わせたようなことに、ちょっとずつなっていくんです」

PW「言っちゃうともう、引っ込みつかないですしね(笑)」

NT「そうなんですよ。暗示をかけるというか(笑)。イメージって大事なんですよね」

PW「でもアメリカでドロップアウトしてアートにこだわって生活してた頃から考えると、ものすごい変化ですよね(笑)」

NT「そうなんですよ(笑)。でも破天荒なことをやって美術が成立するって、いっぱいあるじゃないですか。でもそれ自体がすごく嫌になってきて………普通の生活を日々送りながら何か違う視点や見たことのないものを提供できるんじゃないかって思ってます。今だからこそ、ないがしろにしてしまいそうなことを普通にやっていきたい、それが僕が作品を創る上でも、家族や自分にも良いことだろうと思えてきて。………まあそれは、これまで逆側の破天荒なことを散々してきたから………デッドヘッズやってラスタファリズムやって、日本に帰ってきたら遺跡の発掘やって(笑)、どんどん地底に潜ってたんで(笑)、その反動ですけどね(笑)」
アルバムジャケットであろうとデジタルコラージュであろうとアナログコラージュであろうと、永戸鉄也さんの作品からは、繊細でありながら、その対極にあるようなグルーヴ感、“力強さ” が絶えず響いてきます。それは作品の根底からにじみでてくる腰の据わった存在感とも言えるものです。

そして、そんな見る者の胸の奥にズンと響いてくる強靱なエネルギーの源泉とは、やはり永戸さんの試行錯誤と紆余曲折を重ねた人生そのものが映し出されたものでした。破天荒な日々があったからこそたどり着いたオープンマインドなアートスタイル。これからのシーンに、永戸さんならではのグルーヴが、さらに広く、強く、響き渡っていくことでしょう。

さて、このReportage の最後にお送りする映像は、そんな永戸さんが今回Photoshop world で初めて発表してくれたアナログコラージュ作品を、実際にどうやって制作しているのかを実演してもらった映像です。
これがとにかく実に楽しそうで、取材していた我々も一緒に交ぜてもらいたくなるほど無邪気な制作風景なのです。
ぜひご覧になって永戸鉄也さんのグルーヴを感じてみてください。
  玄関先に積まれていた古びた書籍。こうして戸外にさらして日に焼いたりして、紙を変色させたり風合いを出していくという。  

< Back  |2  Next>
   
 
永戸鉄也
 
永戸 鉄也:
アーティスト・アートディレクター・グラフィックデザイナー。1970年東京都生まれ。高校卒業後渡米。帰国後、96年より、音楽、書籍、広告の分野でアートディレクション、グラフィックデザイン、映像制作に携わる。2003年、第6回文化庁メディア芸術祭デジタルアート(ノンインタラクティブ)部門・優秀賞受賞。同年、トーキョーワンダーウォール公募2003・ワンダーウォール賞を受賞し東京都庁での個展を成功させるなどその活動は多岐にわたる

>>www.nagato.org/

 

< Back  |4  次回のReportageへ>

このページをブックマーク