【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編
撮影テクニック編
ネコの撮影テクニック「前編」
〜レンズを猫に上手く向けましょう〜

稲垣 英徳

猫との間合い
さて、良く懐かせる事に成功した飼い主は、好きな様に飼い猫に接近出来ますが、 当日に撮る事になったカメラマンの場合、そう簡単に猫には接近出来ません。 大抵は、1〜2時間、お互いに慣れる努力をする事になりますが、 顔見知りの猫で、餌を与えたり、遊んだりして居た関係なら兎も角、 見知らぬ猫に対して接近するのは大変なのです。
この写真は、階段の上から見下ろして貰って、心理的に向こうが安心出来る距離で在る、数m以上の直線距離を保って撮っています。決めポーズにはなりにくいですが、取りあえず慣れて貰うのには有効です。

勿論、動物好きの筆者も含めて、動物に直ぐ好かれる人と言うのは居ます(動物撮りを仕事でされる方の多くは、その能力に長けている方達とも言えます)ので、そう言う人はより簡単に色々な動物に接近出来ますが、 大抵の人は、所謂防衛本能が働く範囲内で何か猫にとっての異常行動をとるのは難しいのです。 スタジオでの猫撮りに始めて挑んで見た人が、時間内に撫でさせても貰えなかったと言う失敗話しも在る訳です。


厄介な事に、人間も含めて生き物の撮影の基本は目にピントを合せる事である以上、レンズは目に向けられます。 撮影に良く使われる様な大口径のレンズは、人間でも一瞬緊張する物ですので、猫には慣れが必要となります。 大体、どの生き物も、自分の目より大きい口径のレンズを向けられると緊張する為、猫もレンズ等を向けられと言う事にある程度慣れないといけないと言う事が在ります。

そして、小口径で在っても、コンパクトデジタルカメラなどが採用するアクティブ方式で猫の事を照らす行為は、十分、猫側とっては異常行動の一つと受け取られますので、防衛本能が働く範囲内での撮影が難しくなります。

さて、ではどの様な距離で防衛本能が働いて居るのでしょうか?

img09 【写真 9】
写真4の猫がカメラに慣れるまで、望遠である程度カメラに慣れてもらっている時の物です。
無意識に防衛本能のスイッチが入る範囲と言うのは生き物の種に依って様々で、これは人間にも起る本能的な物です。 人間の防御本能のスイッチが入る半径は人間の視覚と密接な繋がりが在りますが、猫の場合も実は猫の視覚に繋がりが在る事から、猫の目に対する理解の一環を応用出来ます。

猫の目は、品種に依る所が大きいですが、正視野が人間に近く(大体5〜10度程度狭いの差だそうです)、全体の視野は10度程度広い作りになって居るそうです。また、実際に物の距離などが識別するのは、大体2〜6m迄の距離で在ると言われますので、視力が0.2程度の人の感覚に近い物なのかも知れません。5〜6mの距離を離れると、動きのみに反応する様になりますので、大人しく望遠で撮ると言う選択肢もスペースの在るスタジオ撮影では在る事は在るのです。

元々、識別エリアに見ず知らずの相手が踏み込むのは難しく、大抵の場合、顔見知り程度で在ったなら、2〜3m程度の距離は保つと猫に不安を与えない、そして、全くの見ず知らずの関係で在った場合、先ずは5〜6m程度の所でカメラを構える必要性が出て来る訳です。また幸いな事に、5〜6m離れると、アクティブ方式の光も、猫にとってそこまで眩しく無くなりますので、比較的協力的(と言っても薄目になってしまいます)な写真が撮られる事になります。

接近して、マニュアル方式で撮る選択肢が無い場合のチョイスとして覚えておけば良いでしょう。 マニュアルで撮れる場合は、是非とも、にじり寄って、マニュアルで根気良く、この写真の様に撮りたい物です。もちろん、撮影予算との相談になりますので、時間/予算に依っては、より無難な物を狙って撮る事になります。

img08 【写真 10】
この様に近づいて撮るには、猫と一緒に寝転がって、根気よくタイミングを計る必要が在ります。大きく動かないで安心させる訳です。
さて、大抵のインドアの撮影では、少なくとも2m程度の所まで何かしらの方法で接近して撮影する事になりますので、 カメラマンの場合、匍匐前進を試みる方が多く居ます。実際この写真では、自分も猫に対して匍匐前進で、実にレンズから1m未満の所迄躙り寄って撮っています。これは、少なくとも視線の高さを猫と同じかそれ以下に低くする事に依って、猫の防衛本能が接近するカメラマンを脅威として捉える間合いが短くなる為です。

この為、猫相手の際は、なるべく低姿勢でアプローチすると言う手段と取るか、猫がある程度の高所に居る事を前提にする方法を採用します。 写真9では、先ず猫に馴れて貰う為に、階段上から見下ろして貰っています。

屋内で飼われている家猫の場合、窓辺、椅子やベッドなどの高所に居て貰うと、こちらのアプローチが非常に容易になります。これは、猫に対しての低姿勢を維持し易い為で、床で寛いでい居る対象を撮る必要が在る場合は、こちらの接近がかなり制限されるので、好ましく無いのです(撮影時間中、ずっと匍匐前進状態で撮るのは大変です)。

基本的な事を述べれば、在る一定以下のサイズの生き物を撮影する場合は、目線を同じ高さ、又はそれに準じる高さに出来る様に手段を講じる事に依って、相手を安心させる事が出来ます。

この為、猫の様な小型の生き物の場合は、獣医師の診察台の様な物か、それに準じる高さの台の上に乗せて撮影する事が望ましいのです。

< Back  |4||  Next >
  稲垣 英徳   2007.04.28