【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
人物撮影:女性モデルを用いた人物撮影3(入門実践)
稲垣 英徳

居れば嬉しいスタイリスト

写真6 【写真6】
スタイリストさんと、撮影前日の衣装確認の打ち合わせの際の一コマ。モアレの有無の確認中。
多くの機種のデジタルカメラ撮影においての最大の問題はモアレの発生ですので、その確認は大事です。
舞台での衣装さんの重要性と言うのは欠かせませんし、良いモデルさんの撮影にも、当然衣装などをきっちり選択して着付けなどを行ってくれる方が必要となります。

スタイリストさんと言うのは何通りかありますが、一般的なところで言えば、基本的にモデルさんのファッションに対してディレクションする立場のカメラマンを上手く細やかにサポートする方であり、衣装面や小物などの一切を色々整えてくれる方、ということになります。

ですがNYの場合、ある程度のスタイリストとして名乗る為には、各種衣料品やアクセサリーを手に取る為の資金的な敷居が高く、各衣料デザイナーとのコネ等の社交能力の必要性が不可欠です。
その為か、NYで活躍されている多くのスタイリスト方の場合、ファッションデザイナーとして成功されていたりと、衣料品業界との兼業の方も多いのです。しかも競争率が高い厳しい世界の為に、実際にスタイリストとして成り立っている方を採用するのは、かなり色々な意味でコストが高くなり、撮影時の立場と言うのは他のスタッフの方達と大分異なることとなります。

ただし日本の場合は、実際にスタイリストとして成立している方が他の主要市場に比べてそこまで多くない割には、専門学校などが色々あるので、ギャラの安い専門学校出のスタイリスト見習いとも言うべき方達が、百貨店などや大手衣料販売のチェーン店などの販売員などを行っている事もあります。
ただのスタイリストと言うと、この様な方を用いる事となります。また日本の場合は、平均的にブランドやアクセサリー、各種着こなしなどへの周知性が高いですから、大抵の低予算の案件の場合は専門の経験豊かなスタイリストがいなくても、見習い的要員で間に合ってしまうということもあります。

当然、その様な専門学校を出ただけと言う方達の場合は、出来ることが他の撮影参加者がサプリメントできることばかりですので、必要性は非常に低くなります。
これが日本国内でのスタイリストさん達のギャランティーが低い理由でもありますし、日本から来られたクライエントの方が、こちらのスタイリストの報酬を見て、その違いに仰天される理由でもあります。

本来は、アパレル業界全般に渡る広い知識とセンス、そしてある程度の縫製〜デザインアレンジなどもその場で即興でできる方が持つべきタイトルがスタイリストさんなので、日本に多い、ファッションが好きだから色々着付けやアレンジをしたいというタイプの場合は、筆者が考えるスタイリストとは似て非なるものとなります。

日本では、各種ブランドの需要や認知度は高いのにも関わらず、プライベートのファッションコンサルタントが必用な欧米型の富裕層が少ない事、そしてその為に小さな規模で活動する良質の一点物や限定品物の衣料デザイナーさんが活動し難いなど、真のスタイリストが育ち難いというのが日本の業界の罪とも言えます。

日本においては、一般の方でも基礎的なブランド物はある程度抑えている方達が多く、衣装のアレンジなども安定している事から、非常に高いレベルでない限り、低予算撮影ではスタイリストさんがいなくてもほとんど問題ないでしょう。読者モデルというものが成立してしまう下地が色々ある訳です。

今まで女性の写真を撮った事がないというカメラマンさんならばスタイリストさんも必要かもしれませんが、その様な事態でない限り必要性を感じる案件も少ないのです。

そのため、大抵の低予算撮影ではスタイリストさんは排除されるか、居ても日当が非常に安くなりがちです。ただ、日本でも一流、超一流のスタイリストの方は、大変な高給取りの方もいますし、ある一定のレベルからは、いるのといないのとではできあがりに大きな差がでてきます。
クライエントの求める物がその様な案件であるかと言う判断を行う必要もありますね。

一般的な低予算撮影においては、地元Boutiqueがクライエントで、そこの商品などを撮影することが多かったりします。そういう場合はそのお店の店員やクライエントの方が、そのまま撮影時のスタイリストとして活動するなど、撮影状況によっては他の方がいなくてもスタイリストの方だけがいるようなことも多くあります。
その様な場合はあらかじめどの様な服が出てくるかなどを打ち合わせをして、撮影本番時の驚きを少なくしておくと、撮影本番、そして後のPhotoshop処理で労力が軽減されます。

では次はいよいよ、撮影時の小道具に入ります。


撮影協力 Model: shima Make: shima Hair: Azu Style: Karen Iseki

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  稲垣 英徳   2007.12.20

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