Photoshop world Column
ORGONIC ∞ GRAPHICERS #07
ISENEEHIHINEE: 4連星で魅せるライブATTACK
テキスト・深沢慶太
−−DTP革命が増えすぎた市井の自己表現願望を広く"一般"に解き放って、すでに十余年。"業界"のまわりには、多数のワナビーが浮かんでは消えていく。人々は彼らをNEWタイプと見なし、"クリエイター"(造物主)と称揚しつつ消費していくのだった−−。

 

LIVE PAINTING @ KDDI DESIGNING STUDIO (2006-06-09)

 
LIVE PAINTING @ KDDI DESIGNING STUDIO (2006-06-09)


あまりにも斬新。あまりにも鮮烈−−NEWなタイプは常々、にわかには受け入れられがたい。類型的にカテゴライズ不能、ゆえに評価も不能とは、まさにOLDタイプの哀しき限界。
「うぬぼれるなよ、お前の力で勝ったのではない……Photoshopの性能のおかげで勝ったのだ」
「負け惜しみを」
「うっ、せ、正確な射撃だ」

LIVE PAINTING @ KDDI DESIGNING STUDIO (2006-06-09)
LIVE PAINTING @ KDDI DESIGNING STUDIO (2006-06-09)
事実、Photoshopのインパクトはその汎用性にあり。だがそれがライブペインティングという生身のバトルに投入された時の威力は、予想を遙かに上回っていた。
「これが白いやつか。お手並みを見せてもらおう」
その刹那、変幻する色面、残像とともに3倍のスピードで展開する攻防。為す術なくただ驚愕し、その衝撃に戦慄する。

彼らこそ、ISENEEHIHINEE(通称:他社比社)なる母艦より出撃した、MUSTONE、SKEL.psd、HEARTBOMB、テクノライト5という名の4連星。MUSTONEがマーカーで描いてゆく絵柄に、SKEL.psdがPhotoshop上で着色、投影された映像をHEARTBOMBがMIXし、テクノライト5が効果音や音楽を加えるオールレンジ攻撃で、ライブペインティングの既成概念を鮮やかに突破してみせる。

LIVE PAINTING @ KDDI DESIGNING STUDIO (2006-06-09)
LIVE PAINTING @ KDDI DESIGNING STUDIO (2006-06-09)

「ポップなビジュアルにタイトな展開。デスクトップ上で行われる作業の過程がエンターテインメントになる」と語るその戦術誕生の背景は、「ノープランで描いては消し……既存のライブペインティングに対しての物足りなさから、絵に興味のない人にも飽きずに見てもらえる表現を追求した」。


「白いキャンバスにミスタッチなく絵が完成されていく緊張感と快感、テクノロジーによる時間軸を利用した表現、音楽と絵の連動」−−これぞライブペインティングでなければ果たし得ない威力だが、Photoshop導入の初戦は日本初開催Adobe Photoshop World in Japan 2005でのライブというからずばり、量産型ソフトの雄をライブバトルに持ち込み、性能を200%引き出す手練と脳力こそ、真にNEWたる証である。

かくしてPhotoshop&六感を駆使した波状ATTACKは露悪ばかりのWACKをROCK ON、凡暗をBOMBってILLMATICな実録SHOCKを巻き起こしていくのだった。
 
ISENEEHIHINEE(他社比社)
エンターテイメントをテーマにしたライブペイントチーム。メンバーはMUSTONE、SKEL.psd、HEARTBOMB、テクノライト5。2005年、Adobe Photoshop World JAPANにてLIVEを披露する。
>> http://x3x.tc
 
深沢慶太
深沢慶太
1974年生まれ。編集者。「STUDIO VOICE」編集部を経てフリー。
NuméroTOKYO」誌や"伝説の前衛芸術家" 篠原有司男3部作、田名網敬一の作品集『DAYDREAM』(グラフィック社)の編集をはじめ、雑誌/web/書籍の編集+執筆、展覧会企画、アーティストコーディネートなども手がける。


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