【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編
撮影テクニック編
ネコの撮影テクニック「後編」
〜レンズを猫に上手く向けましょう〜

稲垣 英徳

肝心な所は、如何にコマーシャル撮影に要求される質を維持しながら、猫と言う気まぐれな対象を巧く撮るために、ジャーナリスティック撮影の手法で『用意された偶発的な物を撮る』かと言う事で有り、その為に、猫が遊び、くつろぐ場としての撮影セットの組み方に細心の注意を払います。これらは、よく有る猫撮りの指南書にも通じる物ですが、それ以降は、現実的なスタジオ、特にフラッシュ撮影テクニックの話となる訳です。商用撮影に於いてキッチリクッキリ撮る理由は、このタイプの撮影の場合、後でPhotoshopできれいに抜けるように撮る事を求められる為です。ジャーナリスティックスタイルの撮影は、後の暗室処理、現代ならフォトショップでの加工を前提に撮るのが基本のスタイルでは有りませんから、悪く言えば略撮りっぱなしになる為、後でどうにか出来ない為に色々困った事になります。そのまま使うカレンダーの様な用途の為に撮るならそれでも良いですが、白抜きした物を色々使いたい商用写真でそれは困ってしまうのです。

例えば、『写真2を白抜きにして使えるか??』ときかれたら、『無理です』と答えるしか無いと言う事が在ります。あれは、飼い主が一人でうっとりと眺めるのには良いですが、現実的な利用法は在りませんし、その様な用途は意図されて撮っては居ないのです。後々の白抜きの手間や、発生するフォトショップ上の制限を考えれば、コントロールされた照明条件下の背景の前に猫が居てくれる事が大事であって、撮り方も後の処理を前提とした物となります。例え、猫が準備されたセットアップに居なくても、写真1、写真4の様な感じで在れば、後々の処理は楽なのです。

中編では、後半部分に明るい照明を焚いての撮影と、フラッシュ撮影の二種類に分けられると説明致しましたが、後編では、猫のスタジオ撮影で最も大事な、フラッシュ撮影を主に触れて行きます。
img04 【写真 4】
インドアのフラッシュ撮影は、通常の猫撮り指南書では推奨されませんが、商用撮影、一段上のレベルでは、一転してフラッシュ撮影をマスターする事を目指します。
中編からのおさらいと基本照明図
さて 猫の撮り方(中編)に於いて、二灯、又は三灯で猫を撮ると説明致しましたが、照明図の通りに撮ります。 猫自体が小さな繊細な生き物である事から、あまり悪戯に照明がある所も良く無く、さらに猫の行動にコントロールが効かない所では猫を追い回して一日終ってしまう事から、照明図に在る様な配置が望ましい訳です。別に、左側の壁いっぱいでも構いませんが、取りあえず、どちらか一方は壁に面して、そして微妙に隙間が在って、猫が避難出来るスペースがある事が大事です。この逃げるスペースがある事が大分、猫の気を楽にします。完全に猫の逃げ場を無くすと、猫がパニックを起こす恐れが在りますので、望ましく無いでしょう。
img05 【照明図】
この照明のうち、照明3とレフ板2は完全にオプションです。大抵の場合、スタジオが白い壁である場合は必要が無いでしょう。もし黒い壁やグレーの壁のスタジオの場合はレフ板を用意する程度と覚えて頂ければ問題が在りません。照明3は、入れる必要が生じた場合は、天井からの光やバウンス光と言う形で入れると良いでしょう。筆者の場合は、バウンス光として使用しています。  猫は基本的に図の赤枠のエリアの中で遊び、寛いで貰います。赤枠のエリアとそれ以外の所では固さが違う様にしておく事で、猫が無意識に赤枠エリア(別に赤く線を引いている訳では在りません)の中に留まって貰えます。季節、気候にも依りますが、暖かくしても良いですし、色々な工夫が出来ると思います。要は、猫が照明の左右のバランスの良く撮った際に背景が後ろに収まってくれる所に居てくれれば良いのですから、居て貰う必要の在るエリアを猫にとって過ごし易くしておけば良いのです。

赤枠のエリアの中は比較的均等になる様に照明、レフ板を配置する必要が在りますが、猫の位置に依って多少の明るさのムラが生じますので、上手く照明やレフ板を操作してなるべく均等な照明にしたい所です。  また、大人数では猫が神経質になりますので、必要最低限の人数で照明やレフ板の操作を行う必要が在るのは言う迄も無いでしょう。理想は、カメラマン+1の少人数でなんとかやりくりしてしまう事ですが、現実問題としては、カメラマン+1+(飼い主)と言う形になって、飼い主には、ある程度注意を向けてもらいたい時に活躍して貰い、後一人のアシスタントの人に色々活躍して貰うしか無いでしょう。

ただ、猫に依っては、文字通り、1:1で撮る必要が出る事もありますし、そう言うときはあまり気にせず、多少は照明で遊んで、柔らかい影を色々作ると面白みもでますので、神経質にならない事が大事です。

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  稲垣 英徳   2007.05.01