【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「中編 2」
稲垣 英徳
さて、60〜70年代には技術的な一応の完成をみた魚眼レンズが、なぜ、QTVRの時代になってから、それほど多用されなかったのでしょう?

まず、魚眼レンズ(円周魚眼レンズ)は0-360度の周辺視野を得るために天頂方向に向けて撮った際、水平線に近づく程画質は低下します。この問題は、魚眼レンズの歪みをPhotoshopで補正すると、さらに顕著になります。また、多くの魚眼レンズの画角が170〜180度であるので、カメラマンや三脚等が大きく写り込んでしまうために、ワンショット撮影には非常に不向きだったのです。

さらに、魚眼レンズで撮られた物をパノラマ化するためのデジタル処理に関する、2000年初頭から2005年程度までの各種の特許紛争がありました。各特許ホルダーが特許紛争を一時期泥沼化させた事もあり、魚眼レンズを用いる撮影方法は、回避される傾向にむかいました。そのため、QTVRの発表と共に鏡を用いる撮影方法が急に注目されるようになります。


ワンショット:鏡撮影の画質
写真 5 【写真 5】
歪み等、未矯正の物から。

鏡を用いる撮影は、光の拡散現象が歪みとして発生するという光学上の特性から、通常のレンズ撮影で得られる画質には遠く及ばないところがあります。魚眼レンズの場合、変換したときに失われる画質は3割程度ですが、鏡を用いる撮影の場合は、7割以上の画質が失われてしまいます。もちろん、鏡面を高密度に仕上げたり、拡散を抑える技術は存在しますが、多くの鏡はそのような大層な加工などありません。反射式の光学機器は鏡が大きい程、ムラが出やすいですから画質的には拙い物しか得られない物が多いのです。また、撮影後に展開するためのフィルター処理を重ねることは、それだけで沢山の変形が行われることです。それにより画像の劣化が著しい物があります。

詳しい内容は次回に触れますが、まずはPolar Coordinateのフィルターがどのように機能するか見ていきましょう。

図 5 【図 5】
変形した図。
完全な正円錐状の物で撮影された場合、Polar Coordinateフィルターで変換され、前のエリア区分は【図 5】のようになります。この内、エリア1〜3は大抵の場合、鏡を支える機材によってブロックされますから視野角にはあまり含めません。支える物の材質、鏡の形状を工夫することで1〜3のエリアの内、使用可能なエリアを増やすことが出来ます。これについては後ほど述べます。
図 6 【図 6】
【図 5】を展開すると【図 6】となります。
展開の原理としては非常に単純です。鏡面仕上げの球、特に正円錐などの物を撮影し、それを展開した場合、【図 6】のように正四角形に展開されると覚えれば良いのですから、比較的簡単に理解出来るのではないでしょうか?この図は、何故このワンショットの方式が高画質を得るのが難しいのか説明する上でも大変重要なものとなります。
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  稲垣 英徳   2007.06.14