【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
打ち上げ花火の撮り方 基本「後編」
稲垣 英徳
先二枚の写真は、いずれも伝統的な設定を用いていますが、純粋に花火の発光が強すぎて失敗しています。現在の花火大会では、圧倒的に以前の花火の光量を上回る物が複数発同時に打ち上げられることが多いので、従来の絞り値やシャッター速度では撮影が難しくなっているのです。

多くのベテランカメラマンがスターマインなどの花火でしくじるのも、大抵はこの80-90年代からのポジ撮影での設定を墨守している事に原因があります。

例えば比較的街の照明が暗めで、伝統花火などのように花火の光量も少なく、打ち上げ間隔も緩い花火大会などでは有効な設定ですが、多くの都市部の花火大会では、光量も多く、絶え間なく打ち上がり、爆発の速度も速いものが多いので、現在は一般的なところではISO100 F8:S4 辺りを無難な設定とする風潮もあります。

各種のNDフィルターを用いる方法もありますが、その場合、暗めの花火の際に何も写っていなかったと言う問題なども発生しますし、色出し等の問題もあるので、今回はNDフィルターについては割愛します。
【写真4】
控えめな花火が多い小規模な地方自治体の花火大会は、古典的な設定も有効です。
絞りF13、シャッタースピード17秒。
地方での撮影では80-90年代からの定番設定に多少アレンジを加え、絞りをF8からさらに絞りF13〜F16で撮る方法もあります。
ですが都市部での花火大会などでは、散開が早く、光量が多過ぎるタイプの花火が多く使われるので、この設定では望ましい結果を得るのが難しいのです。

現在のデジタルカメラを使用した環境では、どの様になっているでしょうか?

デジタル撮影では

現在の花火で長時間露出を試みるのは、以前のポジフィルムの時代に比べてもかなりリスクが高くなります。
一般的なデジタルカメラは長時間露出を行うとノイズが現れます。(カメラセンサーの温度が低温で維持できるシステムのものは長時間露出可能)
これは多くのデジタルカメラ共通の問題ですが、各カメラ毎にセンサーのデザインの違いから露出時間によって現れるノイズ率が違うのでここでは詳しく述べません。
【写真5】
F14:S5。絞り値を伝統的なものより絞ることで、光量が多すぎるのをカバーしています。
一般論を述べれば、APS-Cなどの大型センサーの機種の方がノイズに強いなどの傾向がありますが、各カメラのセンサーがいつの世代のものであるかなどで大きく左右されます。また、センサーの種類や搭載ソフトによって色出しにかなり変化があるので注意が必要です。

特に夏の夜の高温多湿など、カメラにとって望しくない条件の場合は、なるべく短く、花火が散る最低限時間の露出で撮っていく事が有効となります。
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  稲垣 英徳   2007.08.16