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Photoshop world Column
変わり続ける都市「東京」を撮り続ける写真プロジェクト、東京アーカイブ
TOKYO ARCHIVE#08
テキスト・茂手木秀行

「雲が思い出を連れてくる…」

 

 
a_000_晴海二丁目
Copyright: Hideyuki Motegi
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※著作者に許諾をうけて、高解像度の作品をご提供いただいています。
 
きれいな雲、見つけました。大きな綿雲が夕日の残照に映え、東京に浮かび上がりました。雲はいつ見ても美しく、そして切ないですよね。青空に浮かぶ白い雲を見ても、夕映えの赤い雲も、暗い空の雨雲も。雲はいつまでも、いつの日も雲のまま。だから、雲を見ると「あの日」を思い出して切なくなるんでしょうね。皆さんもそうでしょう?

写真においても雲は重要な存在です。仕事の上ではいわゆるピーカンを望まれることが多いわけですが、風景写真では雲、大事ですよね。単に青い空より、雄大な雲の広がりがある方がダイナミックないい写真になりますからね。でも、実のところ僕が一番好きなのは、もう雨が降りそうな、いえ、雨降るさなかの重い重い雨雲の感じが好きなんですよ。

「仕事では」と書きましたが、ファッションフォトの分野ではピーカンにこだわらなくなってきましたね。それを良いことに雨の日も積極的にロケをしています。もちろん、撮影は大変だし、何より服が濡れるのでスタイリストは嫌がります。そこをなだめすかして、無理矢理撮影するわけですが雨の日は、ほんと僕の好みのトーンになるのであります。そういえば、東京アーカイブではまだ雨の写真はなかったかな?

ところで、ここは晴海2丁目。奥に見えるのは豊洲タワーです。左手の空き地もいずれ、大型開発されてマンションが立つでしょう。そこにすむ人は一直線にのびる海辺の遊歩道を雲と海を眺めながらゆったりと散歩するんでしょうね。羨ましいなあ。家の目の前が海だったり、川だったりと水のあるところは本当に羨ましいです。水は人を和ませ勇気を与えるように思うんですがいかがでしょ。僕は多摩川のそばで生まれ育ちましたが、多摩川は家族団欒の場でもあり、恋を語らう場でもあり、友と戯れる場でもあり、そして一人の心を癒してくれる場でもありました。人が暮らし始めたら、この遊歩道も人を結ぶ大切な場所になって行くのでしょう。

僕も住みたいなあ、ここ。

What's "Tokyo Archive" ?
自分が生きる街、時代を写真家の目で記録し残す。これは、写真家という職業上の責務でもあり、見過ごすことのできない被写体です。心を同じくする仲間とともに始めました。そして、他の都市にも広がらせたい。それがアートでもあるわけです。写真が持つ記録という力を楽しみ蓄積し、後世に「平成」という街や時代や空気を伝えていく、東京アーカイブとはそんなプロジェクトです。
http://archive.ihf7.jp/
 
・展覧会情報
Hello, Monochrome! 〜デジタルプリントモノクロ元年〜
デジタル時代の美しいモノクロプリントをテーマとした展覧会。併せてモノクロプリントの意味や制作テクニックなどのセミナーも開催。出品予定作家・講演者は、根本タケシ、馮建国、馬場道浩、中村成一、佐藤希以寿、茂手木秀行ら6名。
  期日: 2007年3月30(金)〜4月1(日)
  会場: EX'REALM(東京都渋谷区神宮前1-12-6 土肥ビル2F)
  URL: http://www.exrealm.com/
 
 
 
茂手木秀行
写真家1962 年東京生まれ。(株)マガジンハウス勤務、ポパイ編集部スタッフフォトグラファー。'90 年ごろより写真のデジタル加工を始め、'97 年ごろからは撮影もデジタル化。そして苦しむ。'03/'05 年雑誌写真記者会ファッション部門賞、'04 年雑誌写真記者会優秀賞受賞。'05 年個展「トーキョー湾岸」開催。「東京アーカイブ」主宰。


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