Column
Photoshop world Column
変わり続ける都市「東京」を撮り続ける写真プロジェクト、東京アーカイブ
TOKYO ARCHIVE#09
テキスト・茂手木秀行

「思い出深い蒲田、屋上遊園地の観覧車」

 

a_000_西蒲田七丁目

 
a_000_西蒲田七丁目
Copyright: Hideyuki Motegi
高解像度のダウンロードはこちら>>
 (W)右クリック/対象をファイルに保存 (M) Ctrl+リンクされたファイルを保存
※著作者に許諾をうけて、高解像度の作品をご提供いただいています。
 
デパートと言えば、屋上遊園地。その昔の定番でしたよね。屋上遊園地どころか、屋上に出ることのできるビル自体が少なくなりましたよね。で、今日は蒲田駅、東急プラザの屋上です。蒲田はJR京浜東北線の駅ですが、東急目蒲線と池上線が始発として接続しています。駅に隣接して東口駅ビルと西口駅ビル、そして東急駅ビルと3つのデパートが駅に接しているんです。数年前までは駅前に丸井もあって、ちょっとした地方都市の様相を呈していましたし、現在もそうです。なかでも、この東急駅ビルの屋上遊園地の特徴は、なんといっても観覧車なんですね。23区内でビル屋上に設置された唯一の観覧車ではないかと思います。

観覧車と言えば、お台場や葛西臨海公園の巨大な観覧車を思い浮かべますが、ここはちいさなちいさな観覧車。それでも、6階建てビルの屋上にありますから、とっても見晴らしがいいんですよ。周りに大きなビルも増えてきましたが、いいえ、まだまだたいしたもんです。池上本門寺やら、多摩川やら、ちょっとほっとする風景を見せてくれます。

実は、蒲田という街、僕はここで生まれて35歳の年まで過ごしました。最後にこの観覧車に乗ったのは、蒲田を引っ越す時だったでしょうか。それから10年ぶりにここに来てみたのです。子どもの頃からこの観覧車に親しんできました。子どものお小遣いでも乗れる観覧車だもんですから。今日も、久しぶりにこの観覧車に乗ってみるつもりでやって来たのですけれど、若いお母さんの親子連ればかりで、気後れしてしまいました。残念ながら、望みかなわずです。昔は悪ガキだけで遊びにきていたんだけどなあ。

ところで、蒲田には撮影所なるものがありました。「蒲田行進曲」を思い出された方も多いと思いますが1936年まで、ここには「松竹蒲田撮影所」がありました。むろん、僕も直接知っているわけではないのですが。蒲田に住んだものにとって、見たことはなくてもこの撮影所、とっても自慢の逸品なんですね。町工場の街として大きな発展も遂げましたが、その一方で文化の薫りのする「松竹蒲田撮影所」は外せません。そして、この観覧車は「家族」の匂いを記憶に残してくれることでしょう。ビバ!蒲田!


What's "Tokyo Archive" ?
自分が生きる街、時代を写真家の目で記録し残す。これは、写真家という職業上の責務でもあり、見過ごすことのできない被写体です。心を同じくする仲間とともに始めました。そして、他の都市にも広がらせたい。それがアートでもあるわけです。写真が持つ記録という力を楽しみ蓄積し、後世に「平成」という街や時代や空気を伝えていく、東京アーカイブとはそんなプロジェクトです。
http://archive.ihf7.jp/
 
 
 
茂手木秀行
写真家1962 年東京生まれ。(株)マガジンハウス勤務、ポパイ編集部スタッフフォトグラファー。'90 年ごろより写真のデジタル加工を始め、'97 年ごろからは撮影もデジタル化。そして苦しむ。'03/'05 年雑誌写真記者会ファッション部門賞、'04 年雑誌写真記者会優秀賞受賞。'05 年個展「トーキョー湾岸」開催。「東京アーカイブ」主宰。


< Back  |2|10  Next >

このページをブックマーク