【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「前編」
稲垣 英徳
束の間のAPS-Pの規格

1996年に登場し、2002年迄に殆どのカメラメーカーがデジタルカメラの発展から撤退してしまった、APS規格のパノラマ仕様カメラの規格で「APS-Pの規格」という物があります。これは、APS規格の露光面のエリア(横30.2mm x縦16.7mm、APS-Hという別名があります) の横幅を最大限に使い、既存の35mmの規格で在るアスペクト比(横30.2mm x 縦9.6mm、3:1)を上下トリムして使う規格でした。
【写真 10】
小型APSカメラのC,H,Pモードの切り替えスイッチ、APS-P若しくは、APS-Hを選択する事でカメラの仕様書に載っている広角を得る事が出来ました。また、Pモード選択しておけば、サービス版でパノラマプリントが出来たのです。この写真ではPモードが選択されています。

この規格の最大のミソは、例えば通常のプリント出力(APS-C)では30〜35mm程度の画角なのが、APS-P、APS-Hでは28mm相当の画角を得られた事にあります。35mm判の規格というのは、言われている程統一された規格では無く、カメラによって区々でしたが、APS規格では殆どのカメラで同じ露出エリアが得られる統一された規格でした。これによって一般的なパノラマ写真のアスペクト比は3:1という規格(概念)が固定したのです。

また、デジタルの時代になって直接ネガのデータを取り込み、Photoshop上で処理する側にとっても3:1は何かと都合が良かった事も、3:1の比率が受け入れられた最大の理由でしょう。しかしながら、90年代の終わりに消費者向けデジタルカメラが大ヒットし、さらにフォトインクジェットプリンターの普及によりDPEでのプリント版のパノラマ用紙のサービスは急激に姿を消す事になります。2007年現在では、専用プリンターが置いてあるDPEのお店を見つけるのは難しいのではないでしょうか。

デジタルの時代に

本来のパノラマカメラで在るスキャンニング方式は、デジタルカメラの時代の中でも健在な原理で、代表的な現代のデジタルスキャンニング方式のパノラマカメラとしては360度の高画質デジタル映像が撮れるPanoscanのカメラなどがあります。車などのハイエンド広告や美術館、軍事、学術用途で主に使われるこのカメラのお値段はデジタルカメラの中でも高めであり、税金や諸費用を入れると取りあえず撮れる体制にする為に4万ドル(北米での2007年4月現在の価格から)程度最低かかるシステムです。
【写真 11】
フルサイズセンサーカメラで16mmの焦点距離で撮ったスナップ写真をトリムしただけの物。水平角度は96度。この辺りまで来ると、かなり難しくなるのが判りますね。この写真では微妙にプールの中心から外れている為に歪んで見えます。

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  稲垣 英徳   2007.05.14