【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「前編」
稲垣 英徳
値段の関係から、多くのカメラマンやデザイナーの方達にとってはこれらのシステムを使うのは、予算の都合上出来ない相談となります。レンタルすれば良いと言っても、カメラの一日のレンタル代だけでちょっとしたデジタル一眼カメラが買えてしまう値段のシステムですから、これを数日間から一週間に渡って借りる事になる通常のロケの機材経費が出せる所は大手のクライエントを除けば少ないのです。

第一、この方式の撮影時間自体は、カメラの種類にもよりますが、デジタルといえども数分〜30分程度の撮影時間がかかるので、所用時間は手抜きで撮る多重露出とあまり変わらない事も大きいでしょう。多くのデザイナーや消費者達の考えるパノラマとは、せいぜい、昔の記念集合写真か、レンズ付フィルムの頃からある安直なトリミング式のパノラマか、古くからある雲台を回転させて多重露出で撮る方法であって、なかなか正統派のスキャンニング方式のコストは思い当たりません。ワンショットパノラマの様に、一瞬で撮れる物と思っているデザイナーの方達も多いのです。

そして、クライエントにとってのパノラマ写真とは、今回のtipsで紹介して居る「トリムする形式」になりますのでこのスキャニング方式は何かと忘れられる傾向があります。

この為、最初から一枚の画像が手に入る物では、どちらかというと、スキャンニング方式とは違う、フォトショップなどでも比較的簡単に処理出来る、ワンショットパノラマの方が低価格で数を撮影するのが大事な不動産市場などでのインドアなどのパノラマ画像撮影では活躍しています。これは、最高の画質が得られるスキャンニング方式、ある程度の画質の得られる雲台を回転させる撮影方式とは似て非なる物で画質は低い物ですが、低画質QTVRとして出される事が前提で、高画質を要求されない、不動産市場向けのパノラマではニッチを形成しているものです。後編では、このワンショットの簡単な撮り方,自作のtipsも紹介致します。
【写真 12】
広角35mmのレンズで撮影されたニューヨーク港です。トリム後に8:1のパノラマになる様に処理されています。

この【写真 12】では、マンハッタン島が35mmで撮影されていますが、撮影対象の条件が合えば、この様に8:1のパノラマにも出来る事が判りますね。

この手の極端なトリムをされた物は画面では存在しますが、観光地のお土産店で見かける極端な横長ポスターでも実際の所は4:1〜5:1の比率が限度です。これは人間の視角心理的には、3:1程度のプリントでなければ縦が4インチ(約10cm)を超えるプリントになると、横に長過ぎる様に感じる為です。画面でいうなら、横にスクロールする必要がある画像を「横長過ぎる」とユーザーが感じるのに似ています。ここら辺の説明は慣習単位と言われる人間の感覚に基づいた物が説明しやすいのかも知れません。

簡単に言えば、標準的な成人男性の手のひらの幅大きさと、拳から肘までの長さの関係であって、この比率は大雑把に言えば1:3です。これを拳二つ半〜以上の距離で目の前にかざして見ると、丁度その男性の正視エリアギリギリに近い範囲になります。この比率よりも横に長い物も、縦に長いものも、視野から外れ易くなる為に、人間の感覚は不自然に感じるのです。もちろんこれはあくまでも慣習単位での大雑把な話しなので、厳密な物ではありません。

ただ、黄金比、白銀比から中途半端に外れた2.78〜3:1の比率が受け入れられた慣習的な下地の物と思って頂ければ良いでしょう。

さて、トリム式の撮影です

フィルムの時代にパノラマとして親しんで来たものは、実際は上下をトリムしただけの物である事は、今迄の簡単な説明で理解頂けたと思います。横長である限り、理屈では標準画角(所謂35mmフィルムでいう所の50mm)が在れば、後は横長にトリム出来る絵で在れば、写真13の様パノラマ写真化できます。

そして、消費者向けの写真パノラマは、実は35〜38mmの画角が多用されたのも、簡単な歴史の説明から理解頂けたでしょうか?
【写真 13】
写真、絵を上下の視覚を制限するなどして横長にすることでパノラマの効果得る事は古くから知られ、絵画などで用いられて来ました。写真13の様に50mmの標準レンズで撮られた物でも、撮り方によってはパノラマ?になるのです。

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  稲垣 英徳   2007.05.14