パノラマ写真の最近の歴史
さて、パノラマ絵画の歴史は古く、パノラマ写真自体の歴史も昔からあります。パノラマ写真が消費者にも一般的になる以前からプロが使用していた機材は、消費者に90年代以降に売られていた、いわゆるパノラマとは一線を画する物で、随分と高い機材です。
正統派と言われる物は、「スイングレンズカメラ」と言われる類いの物で、有名所はドイツのNoblexや、日本のパノンカメラ商工のカメラ(こちらは残念ながら廃業した様ですので、オークションでの出物を探すしか無い様です)ですが、それらは35mmフィルム版でも非常に高価(発売当時17万円〜)なカメラでした。特定の事しか出来ないフィルムカメラとしては当時の物価を考えると結構な値段ですね。
本格的にパノラマ撮影を主に行うプロの方達が使用していたブローニー版は、さらに高く、発売当時、40〜50万円程度で買えたスイングカメラの物があります。いずれにせよ、主に活躍した時代の物価を考えれば、随分高価だったとだけ述べれば良いでしょう。ちなみに、現在も購入出来る安価なロシア製の入門スイングレンズパノラマカメラであるHORIZON製のカメラは4万円程度します。こちらはLomoと同じく、非常におもちゃ的なカメラであり面白い物です。
HorizonのカメラはLomoのお店で輸入在庫がある時は、比較的容易に手に入りますので、いわゆる「正統派的なパノラマ」で遊んでみたい方は、是非どうぞ。
「スイングレンズ方式」は大体通常露出分で機種に左右されますが、2〜2.5フレーム相当の受光面を続けてレンズをスイングさせて露出させる物で、大体120〜135度程度の画角を綺麗に短時間に得られる事から、スタジアムや大きな公共の場の撮影、景色の壮大なパノラマ写真等に用いられてました。愛好家も多く、元々は学術、及び軍事用に開発された物ですが、あまり画質を問わないHorizonのカメラの使用者が多いなど一つのニッチを形成しています。独特の歪みが発生する特徴がありますが、それを好む方達も多いのです。スイングレンズ方式の元になった 「スキャンニング方式」と呼ばれるものはスリットを回転させる物で、360度撮れるものもあります。これらのスイングレンズも含めたスキャン方式のカメラの多くが受注生産の物が殆どでしたが、デジタルカメラの時代になった現在でも使われている正統派のパノラマ撮影方式です。
さて、これらのスキャン方式はフィルムの装填、現像〜プリントに至る作業が特殊である事が多いので、そう簡単にプリント出来ない、などの問題がありました。フィルムの装填に手間がかかる機種なども多く、量をこなす撮影等にはかなり不向きな形式だった訳です。