【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「中編 1」
稲垣 英徳
【写真 3】
19世紀のパノラマ戦場写真の中では最も著名な物の一つである、1864年二月撮影のLookout Mountainの戦場跡パノラマ写真。Lookout Mt.は第三次チャタヌガの戦いで1863年11月末に陥落した南部の要衝です(米国Library of Congress所蔵。紙への転写は1985年、撮影はBarnard, George N., 1819-1902)、非常に高い完成度で珍しい程3枚とも露出が安定しています。【写真4】で見られる、同一写真家の作品と比べても判りますね。
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セグメント写真を撮る方法自体は、コロジオン法や他の方式のカメラでも多用され、多くの19世紀の代表的な戦場写真がこの方法で撮られました。この方法に衰退が見られる様になったのは、持ち運びが簡単なフィルム、そしてフィルムロールの発明の影響が大きいのです
【写真 4】
Barnard, George N.が1864年のアトランタの陥落時に、シャーマン将軍の命令で街が焼き払われる前に撮影した物がこちらです。この写真で描かれた景色は、南北戦争を描いた多くの映画に登場してきますね。そういう意味では最も有名なパノラマ写真かも知れません。(米国Library of Congress所蔵、撮影はBarnard, George N., 1819-1902)こちらの写真では露出や劣化に大いに違いがあるのが判りますね。【写真3】の様な完成度は珍しく、【写真4】の様な感じがより一般的だったことがお分かり頂けるでしょうか?
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【写真3〜4】の作者である、Barnard, George N.の使った様なカメラは馬車の荷台その物の様な大きな物、そして、持ち運び出来るタイプも、人夫が数人がかりで山や高い建物の上迄運び上げないといけないような物だったことを考えれば、フィルムの登場と共に登場した、手で持てるフィルムカメラの優位性は明らかだったのです。また、フィルムの場合、曲げる事が出来ますから、比較的小さなカメラのボックスの中で、広視野の撮影が可能になったことも、画質では未だ勝っていたこのタイプのカメラによるアウトドア撮影が一気に廃れる理由になりました。

そして、パノラマ撮影も一気にフィルムを使用したスキャン方式のカメラに移っていったのです。


フィルムと共に

19世紀末のフィルムの発明、及び、20世紀初頭のロールフィルムの普及により、パノラマ撮影は一気にスキャン方式の撮影法が主流となります。スキャン方式では、セグメント方式の撮影の様な、明らかに判る露出の違いや、つなぎ目は見えませんから、これが完成されたパノラマ写真として、正統派パノラマを名乗ることとなります。また、20世紀の半ばにはレンズの性能の向上と共に、中判や35mmのフォーマットが普及したことから、トリムする方式が経済的な撮影の主流になりますので、この手法は比較的マイナーな手法として存在する事になりました。

例外としては、ピンホールカメラなどで、印画紙に直接焼き付ける物や、第二次大戦後に現れた、判の大きなポラロイド等を並べる物で、これは個展等などでは現在に至るまで頻繁に登場しています。

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  稲垣 英徳   2007.05.23