【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「中編 1」
稲垣 英徳
専用雲台とは

2003〜4年になると、多くのメーカーがQTVRでの視差の問題を解消する為の雲台製品を出すようになりました。

代表的な物をあげれば、伝統的な三脚メーカーであるManfrotto社の303SPH雲台などは、多くのプロやハイアマの人達に使用されている大変優れた物です。同じように、Kaidan社などのQTVRに特化したメーカの出すQTVR専用雲台は、物によっては大変な精度と操作性があります。受注注文の製品などは、結構な金額の物が多くあります。

さて、問題は、筆者も含めて機材を担いで歩くしかない人間にとっては、その重さはロケの際には、死活問題だということです。人を常に2〜3人以上連れて歩けるならともかく、多くても1〜2人、それも必ずしも車で乗りつけてその場で撮影が出来るわけで無い都市部や、自然公園内などの山道の中を歩かなければならない人にとっては、雲台とそのアクセサリー部分だけで3kgを超える機材というのはなかなか持って歩くのが難しいものです。雲台+カメラで5kgを軽く超えるトップヘビーな物を支える為の三脚は当然、最も軽いカーボンファイバー製であっても2kgを超えます(強化アルミやチタニウム製なら、さらに重たいです)から、下手をすると三脚機材を持ち歩くだけで半日も歩けば力つきてしまいます。

筆者の場合、純粋にカメラとレンズ、フラッシュ、及び電池などで、既に10〜15kg程度機材を担いでいますから、これで雲台と三脚で最低でも5kg足されるのはなかなかの負担となります。特に半日以上外を歩く日程では、この重さはかなり厳しい物となります。

重さ等を気にしなければならないカメラマンの用途の為に、ニッチ的に発達したのが、軽量の簡易パノラマ専用雲台です。

これらは、総じて比較的単純な構造を持っていますので、塩化ビニールなどのプラスチックの成形や、旋盤を回しての金属加工が出来るスタジオや、そのような技術を持ち加工機材へのアクセスがあるカメラマンならば自作しても構わない物です。実際、ネット上を検索するといくつかの自作モデルが散見できます。
【写真 10】
筆者が頻繁に使用する小型軽量タイプのパノラマ用雲台Nodal Ninja3。
これらの雲台の多くは大型のデジタルカメラ(中判デジタルや、Canonの1DSの様なカメラ)のサポートをしない前提で設計されており、主にコンパクトデジタルカメラの上位機種、そしてプロスーマーDSLRや入門DSLRを対象しています。使用出来るレンズなども制限があるモデルが多いですが、少なくとも、一般的な使用条件において不自由は生じません。

代表的なこの軽量パノラマ専用雲台としては、プラスチックとアルミ芯でできているPanosaurusなどが知られています。Panosaurusは知られている中では最も安い部類に入り、軽量ながら、ある程度の長さのレンズをサポートすることを主眼に入れているタイプです。勿論、主な構造に塩化ビニールの一種を使用しているため、その分の強度が落ちるというトレードオフがあり、あまり重たくて、高額な機材は乗せられないという問題が生じます。しかしながら、一般的なズームキットに付いて来る様なレンズは大抵の場合問題なく着けられることから、こちらはちょっと本格的に手持ちのカメラ+キットレンズパノラマ撮影をやって見たい人向きかも知れません。

筆者の愛用している物は、少々マイナーながら、Nodal Ninja【写真10】を現在頻繁に使用しています。値段的には低価格で知られるPanosaurusと、しっかりと作られ、価格もそれなりなManfrotto303SPHのちょうど中間に位置するタイプの雲台です。筆者はNodal Ninjanoバージョン3から使用しているため、バージョン1、2の使用感については不明ですが、こちらの売りはある程度の強度がありながら、コンパクトな構造であるということです。金属製ながら、本体がわずかに475gという軽さとカメラバッグのポケットに入るサイズに惹かれて筆者は使用していますが、全体的に小さな作りな為、1DSシリーズのカメラが使えない、大型望遠レンズを使えないなどの問題もあります。

しかしながら筆者の場合に限って言えば、あまり大きな焦点距離の望遠を回してのパノラマ撮影は行いませんし、かなり纏まった予算が出て、本格的に人数を連れて大きなカメラを持ってロケハンする時は、303SPHを持って行けば良い程度のスタンスで、普段持ち歩くカメラバッグにはこの小さなNodalNinjaを入れているのです。
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  稲垣 英徳   2007.05.23