【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「中編 1」
稲垣 英徳
CS2迄のパノラマ編集

Photoshopでのセグメント方式でのパノラマの作成は、Photoshopとスキャナーという組み合わせで、古くからありましたが、トリムをしない物の場合、初期のバージョンから3.0までは実質手作業で、プリントした写真等をスキャナー上に綺麗に並べてスキャンした物をレタッチしてつなげるという方法が一般的でした。

バージョン3.0でレイヤー機能が出てから、バージョン7.0までの間は主にレイヤー機能を駆使して、レイヤー毎のトランスフォーム、そしてそれらのレイヤーを綺麗にブレンドして重ねるという物でした。これらの手法を用いる場合、撮影には色々注意が必要でした。三脚を使用して、カメラは標準レンズを付けた物で撮影された写真をスキャンして取りこみ、レイヤーを使って重ねた物である場合は、綺麗につなげるのに、時間はある程度はかかりますが、レイヤーのブレンド等に注意すれば【写真13】程度の物は基本的なレタッチ能力があれば作れたのです。

PhotoshopCSのバージョンに入ってから、PhotomergeがPhotoshopにも組み込まれたため、緻密に撮影段階からパノラマになるように準備されていた写真などは簡単にパノラマにする事ができるようになりました。
【写真 13】
CS2版のPhotomergeで作成されたパノラマ。あまり高い評価を得られなかったCS2迄のPhotomergeも実はその仕様を理解すると、ある程度の物が作れます。数カ所程、レタッチをする所は発生しますが、QTVRで使用する際は誤差のうちで済ませられる物が大半です。写真は三脚を使用+35mmで撮影された物をPhotomergeで出しています。上下トリム以外は手を加えていませんので、問題エリアが数カ所あるのがわかりますね。【写真13】はNJ州のLiberty State Parkで。
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さて、CS及びCS2には、一般ユーザー向けバージョンであるElements2にあったパノラマ作成機能である、Photomergeを搭載していました。これはアドバンスカメラユーザーが多いフォトショップのユーザー達にとっては、かなり使い辛かったと言われています。あまり知られてはいませんが、この機能は元々コンパクトデジタルカメラの入門〜中堅機種のユーザーが簡単なパノラマ作りを楽しめる様にと作られた機能であった事から、多くの制限がある物でした。

以下は最も知られていた、フォトショップユーザーの多くのカメラマンにとって最大のネックになっていた制限です。
「35mm換算で、広角35mm〜望遠70mm相当の範囲で撮影された物は効果的につなげる事が出来るが、35mmよりも広角、例えば28mm相当の広角で撮った物は綺麗につなげられる成功率が低い。」

35mmより広角だと出来ないという訳ではないのですが、35mm程度までの広角レンズしかきちんと対応していないということは、デジタル一眼の入門機のキットレンズの多くの広角側が27-28.8mm相当ですから、物足りなさを感じたユーザーが多かったようです。

しかしながら、多くのパノラマ写真が、前編で述べたように、35mm相当の画角がパノラマ撮影に多用されたこと、そして、コンパクトカメラ、及びコンパクトデジタルカメラの多くが当初は35mm相当のレンズを備えていた頃を考えると、開発者側の当初の判断も無理もない事だったのでしょう。またプロの環境などでも、筆者もプリント用途のパノラマを生成する際の撮影ではなかなか35mmより広角のレンズを使うのはレンズの歪みなどから、躊躇するという所がありましたので、35mm程度までの広角しか対応していなくても実はあまり困らない所もあったのです。

実際、【写真2】の様に、50mmの標準レンズなどで撮られた物をつなげる方が、正確で簡単だったのです。どちらかというと、筆者には360度のパノラマの生成がPhotomergeではできなかった方が問題でした。


前述の制限があったことから、CS2のPhotomerge機能を使う前提の撮影の場合は、撮影は広角は35mm相当まで、理想は最も問題の少ない標準レンズ(50mm)相当の画角で撮影するのが最適です。大体40%程度が次の写真と重なる様に撮影するとよいでしょう。

また、視差の補正能力も殆どなかったことから、手持ちでは多い盛大な視差を発生させた写真達を繋げようと試みた場合、非常に残念な結果を生じることが多かったのです。このため、三脚などを使用しなかった写真では、あらかじめ視差のエリアが重なる場合は事前編集をする、などの小技が必要でした。
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  稲垣 英徳   2007.05.23