【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「中編 1」
稲垣 英徳
手持ち撮影

さて、フィルム、特にロールフィルムの発明は、カメラを手で持ち歩ける様にしました。また比較的安易に続けて何枚か撮影が出来る様になった事から、複数枚を張り合わせて一枚のパノラマにしようと言う試みも当然、アマチュアカメラマンが行うようになりました。
【写真 5】
2002年に筆者がQTVR用に撮ったパノラマから。手持ち撮影の検証用に撮った物ですが当時のつなぎ合わせる為に筆者が使ったソフトが見つからなかったため、改めてつなげる処理をしました。当時は、これでは上手くいっていますが、手持ちで撮影した物を綺麗につなげるのは大変難しいことでした。大体、水平画角で170度+程度の視野です。
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127判(日本ではベスト判とも呼ばれています)の販売は多くのアマチェアカメラマンを生みだしました。現在でもそうですが、多くのアマチェアカメラマンは、当時の重たい木製三脚を持ち歩かず、そのまま手持ちで撮ることを好みましたから、必然的にチグハグな如何にもはり合わせたというパノラマが沢山作られる様にもなりました。これが、はり合わせ写真はアマチェアの所行と認識される様になった理由の一つとも言えます。

手持ちで撮影された写真を張り合わせる方法は、戦後においては、ポラロイドカメラ等で行うのが最も人気だったアプローチです。映画や広告等でも多く登場したこのアププローチは、デジタルの時代になってからはMulti Row Panoramaなどの手法で生きていますし、未だにポラロイド等の張り合わせの作品を作られる作家の方もいます。しかしながら、手持ち撮影では、盛大な視差(parallax)が発生します。その為、綺麗に張り合わせるのは大変になりますので、様々なテクニックや機材がありました。

【写真 6】
数枚程度の手持ち撮影の写真をはり合わせて作成したパノラマ、軸足が黄色い線に乗っていたのが判りますね。
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手持ちでの、視差解消方法としては、近場を撮らず、なるべく【写真5】の様な遠くにあるものを撮ることが一番ですが、その他にも、軸足上にレンズの絞りがくる様に持ち、軸足を綺麗に回転させながら撮る方法があります。それでも大抵の場合、安い三脚にも及ばない程度にしか出来ません。又、手持ちである以上、完璧な水平を保つのは不可能ですから、どうしても無駄がたくさん出てしまっていたのです。

さてこの手で持つ方法から一枚の綺麗なパノラマが作れる様になったのは、実はデジタルの時代に入ってからであり、特に至近での手持ち撮影は、視差を解消するソフト、及び関連特許に基づく技術が、多くのパノラマ作成ソフトに組み込まれる様になった2003年以降を待たなければなりません。また多くの主要なPanoramaソフトでその特許が生かされるようになった時期を考えれば、多くの写真家にとっては、この技術を生かした製品を手にするようになったのは実に2005-2006年、主要ソフトに限って言えば実は今年(2007年)の時期程度という、ごく最近であることを特記するべきでしょう。それまでは、雲台を使った伝統的な手法でパノラマを作成する方法が主流でした。
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  稲垣 英徳   2007.05.22