【Photoshop for Photograph】
写真加工テクニック編 撮影テクニック編

撮影テクニック編
Photoshopで出来る簡単なパノラマ 「中編 1」
稲垣 英徳
雲台を使っての撮影

【写真3〜4】のセグメント方式の写真を見ればわかるように、雲台を使った多くのフィルムを使ったパノラマは2〜3枚を重ね合わせて作成する物でした。
多くても3〜4枚というのが限界だった理由の一つは、当時の暗室技術や、2000年程度までのデスクトップ上のソフトの性能では、プロ用途の場合は、それ以上の物はなかなか引き延ばしての使用に耐え得る物ではなく、そのような用途のためには、実際にパノラマ専用カメラで撮るしか無かったことがあります。
【写真 7】
2002年に撮影。三枚をつなぎ合わせPhotoshopなどで処理する伝統的な手法の物です。大体水平画角で37〜8度程度だったと思います。望遠で撮影した場合に画角が狭くなり過ぎ、景色が判らなくなるのを解消する為にパノラマを作成する手法は昔からあり、これも140mm相当の焦点距離(つまり14度の水平画角です)では景色が把握出来ない為にパノラマ化されました。
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この内、魚眼などの特殊広角レンズを二枚合せてパノラマを作る手法が発展して、デジタル化時代にはNikon社の魚眼レンズを利用することに特化して完成したとも言えるのが当時のipix社のipixですが、ここでは詳しくは述べません。

2001年春にApple社がQTVRを発表すると同時に、QTVRの需要が発生したことから多くのカメラマンがパノラマ撮影に参入します。ただ、実際には2002年度秋のQuickTime6.1のリリース前後に相まって登場した多くの作成ソフトが出たことも大きいでしょう。

もちろん、Photoshopはその頃も大いに活躍していました。当時のQTVRはまず、はり合わせた写真で、縦長のPICTを作成する必要があったため(当時は未だPICTファイルを用いたアニメーションファイル形式に近い物を作る必要が在ったのです)、この呆れる程縦長のファイルを先ず横で綺麗に張り合わせる為に多大なPhotoshopでの作業時間を要したのです。一度綺麗になったファイルは回転させ、縦長にし、所定のピクセル数にしてからQTVRに変換ソフトで変換して出したのですが、これがまた随分面倒な作業だったため、制作単価は安い物とは言えませんでした。
【写真 8】
2002年に撮影した筆者がQTVR用に撮ったパノラマ写真から。当時のネット事情に合せて低画質用に安直に撮影された為、実は視差が発生していました。また、使用した軽量三脚が強風の為安定せず、等倍ではかなりひどい物でした(写真は、当時のソフトでつなぎ合わせたもの)。
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しかしながら、当時はQTVRなどでは、納入サイズがあまり高画質を要求されることがなかったので、この程度でも十分大丈夫だったのです。一部のWeb用途などに求められるQTVRは解像度がかなり低かったので、この事を利用したニッチ製品が、ワンショットパノラマ機材となっていきます。これに関しては、次回のtipsで述べたいと思います。

ここで特記すべきは、わずか4〜5年の内に、CPU及び、GPUの性能の著しい向上と、多くのソフト面での技術革新が起きたことから、撮影での注意事項が、筆者がパノラマ撮影をQTVR向けに始めた2002年当時に比べると、非常に寛大になってきたということがあります。当時は些細なミスでさえ、パノラマ写真の作成の失敗につながったのが、2007年現在のソフトではなんとかしてしまえるのです。勿論、三脚撮影等の基本的な所はあまり変わりませんが、少なくとも、精密測量機材の様な繊細さを雲台に要求することが、大きく引き延ばすのが前提で無い限りは、心配しなくて良くなったのです。これが、伝統的な三脚のメーカーであるManfrotto社やKAIDAN社の様なQTVR専門メーカーの製品以外にも、多くの簡易パノラマ雲台が、製品として出されるようになった理由でもあります。

これが、伝統的な三脚のメーカであるManfrotto社やKAIDAN社の様なQTVR専門メーカーの物以外にも多くの簡易パノラマ雲台が製品として出される様になった理由でもあります。
【写真 9】
【写真8】の写真を作る為に使用した同一ファイル達を、現在の最新のソフトで処理した物。同一のデータから生成した物ながら、ソフト側の性能の向上で随分画質が向上しています。特に視差の問題を矯正するソフトの進歩は著しい物があります。
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  稲垣 英徳   2007.05.23